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「未経験者」などとは言え、同じようなミスを繰り返されては、仕事が進みませんし、同僚従業員のモチベーションにも悪影響が生じます。
もっとも、裁判所は、能力不足の問題社員について、容易に解雇を認めず、その結果、会社が賃金2年分以上を支払う必要が生じるケースは少なくありません。
新入社員の労働者が、入社後6か月間で少なくとも作成書面の誤字、電話対応の不出来等131件の問題があった事案。裁判所は、原告の勤務状況をもって直ちに原告が市役所職員としての適格性を欠いていたとは言えないし、適切な指導が行われた場合に原告の執務能力が改善する可能性は十分存在していたと判断し、分限免職処分(解雇)を無効と判断。
→最終的に賃金2年6か月分以上の支払いが命じられました。
新卒採用者や未経験者の場合、能力不足の内容・程度、注意指導など使用者による改善機会の付与(解雇回避措置)が問題となります。
そこで、まずは、能力不足の内容・程度を特定するための方法を紹介し、次に、改善機会の付与について説明します。
会社として従業員にどの水準の業務を求めているのか、文書を使いながら意思疎通を図ることが重要です。
特に、次のような従業員には、業務の水準を明確にすることで、認識のずれを直す必要があります。
この文書には次の内容を記載します
ここでの「当面の業務の目標」について、意識向上のために高い目標を設定すべきかという質問を頂いたことがあります。
当職としては、高い目標を設定することも重要と考えますが、少なくとも「他の新入社員の実績に照らして合理的な最低限達すべき目標」は設定するべきと考えます。
この業務水準を明記した書面で記載されている業務水準に達しなかった場合、注意指導等の指導の対象になります。この場合、目標設定が高すぎると、過大な要求というパワハラの一類型に該当するリスクが生じるためです。
「他の従業員よりも劣っている」「やる気がない」等の抽象的な理由では、能力不足を理由に問題社員を解雇することはできません。
能力不足に対応するためには、具体的な問題行動を示す必要があります
「債務者(会社)提出にかかる各陳述書には、債権者(労働者)にはやる気がない、積極性がない、意欲がない、あるいは自己中心的である、協調性がない、反抗的な態度である、融通が利かないといった記載」があった事案。
裁判所は、「これらを裏付ける具体的な事実の指摘はなく、こうした記載は直ちに採用することはできない。」と判断し、従業員の中で下位一〇パーセント未満の考課順位にあった従業員の解雇を無効と判断しました。
労働者Xは、10月30日、Aという製品を制作する際、設計図に比して20mmの誤差を発生させ、戻りを発生させた。
当社●●は、労働者Xに対して、寸法の確認時に・・・を怠ったことが原因であり、今後は・・・を確認するように指摘した。
具体的な問題行動の内容は都度指摘し記録しなければ、後から振り返った時に特定できなくなります。会社の負担を減らしつつ記録する方法は後記をご確認ください。
ミスなどの問題行動があった場合には、都度口頭で指導をすることが多いです。
もっとも、能力不足の問題社員は、口頭で指導をしても同じミスや指示違反を繰り返し発生させます。
このような従業員への指導は、文書で行います。文書による指導を行うためのポイントは次の3点です。
文書による指導と言っても会社が常に文書を作っていてはきりがありません。
このため、ミスがあった場合(特に同じミスを繰り返している場合)や、客先に迷惑がかかるミスがあった場合には、従業員に顛末書を記載させることが考えられます。
顛末書に記載させる事項の例は次のとおりです。
私が担当した事案は、従業員10人未満の町工場に未経験者として能力不足の従業員が入社したという事案でした。この事案で、会社は、加工ミスの都度、従業員に報告書を作成させていました。会社がこの従業員を解雇し、従業員から不当解雇を主張された際に、当職は、この報告書を活用して従業員側と交渉し、有利な解決を実現できました。
顛末書など従業員側に書かせる書面は、小規模の企業でも活用しやすい指導方法となります。
一日の振り返りを行うための日報を作成させるケースもあります。
この中では従業員側に次のような点を記載させます。
その上で、会社は、その日報に日々コメントを付します。コメントの例は次のとおりです。
これらにより、問題社員自身に書面の大半を作成させることで、会社側の負担を減らすとともに本人の自覚を促すことができます。また、問題行動の記録作成ができます。
次のようなケースでは厳重注意書で指導を行うことになります。
厳重注意書を作成する場合には、具体的な問題行動の内容や、これまでの指導の経過などを具体的に指摘することになります。
●●殿
貴殿は、●●年●●月●●日に事務職員として採用されたにもかかわらず、入社後1か月にわたり、誤字脱字や、計算書作成時に必要な記載事項を確認せずに計算ミスを繰り返しており、事務職員としての業務が任せられない状況です。
既に口頭で指導を重ねているところでありますが、改めて書面で指導を行うとともに、見直しを徹底するなどの方法により、1か月以内に誤字脱字や計算ミスをなくしてください。
※誤字脱字や計算ミスのある文書を残すことで問題行動の記録とすることができます。
私が過去に担当した事案では、相談者自身がインターネットで調べて業務指示書を作り労働者に交付をしていました。しかし、その指示書の内容は具体的な問題行動の内容がわからないなど上記の3点を満たしていませんでした。このため、法的には意味の乏しい指導書となっていました。
労働問題に強い弁護士が関与することで、法的に意味のある業務指示書を作成することが可能です。
能力不足の問題社員について、これまでに記載されたような証拠を重ねた上で、解雇する前に退職に向けての話し合いの機会を設けることが
裁判所は、ミスが多発する従業員の解雇も無効とすることがあるため、話し合いで決着を図るほうがトラブルとなるリスクを避けられるためです。
その際のポイントは次の3点です。
具体的に会社がなぜ能力不足と判断したのか、これまでの経過を説明します
貴方は当社に入社してから●●か月間、・・・・というミスを繰り返しています。この間、当社は、・・・との指導を行いましたが、貴方は、その指導を聞き入れずに独自の方法で進めました。その結果、最近には、・・・というミスまで引き起こし、その結果、当社は顧客対応に追われることになりました。
あくまでミスマッチであることを強調し、他の会社であれば活躍できるかもしれないと伝え、転職に前向きになってもらうように働きかけます。
貴方のやり方は、当社のやり方とは合致しないため、当社に残り続けることは貴方にとっても非常に大変だと思います。別の会社であればあなたの考えるやり方で仕事を進めて評価してもらえるかもしれません。
紛争を避けるという目的のために一定の金銭を支払うことを提案するケースもあります。具体的には次のような条件が考えられます。
退職合意の条件が決まった場合には、退職合意書を作成し、双方が署名をすることになります。その際には、「労働者は、●●年●●月●●日をもって、会社を退職する。」との条項は必ず入れることになります。
能力不足の問題社員を抱えた場合、解雇する前に弁護士に相談することで次のようなメリットがあります。
能力不足の問題社員の対応にあたって最も重要となる指導は、効率的に行わなければ時間ばかりかかって途中で投げ出したくなります。
また、方法を間違えてパワハラとなってしまえば、指導が止まってしまい解雇まで遠退くことになります。
労働問題に強い弁護士に相談することで、法的トラブルになりにくい業務指示書の作成を行い、効率的な指導を実現することができます。
退職勧奨による円満解決を目指すために、台本や話し方の注意点を具体的に助言いたします。また、トラブルにならない退職合意書も作ります。
単に「辞めてしまえ」等というだけでは、退職の合意にもつながりませんし、パワハラ等のトラブルの原因になります。
労働問題に強い弁護士が入ることで効率的な退職勧奨も可能です。
本当に解雇せざるを得なくなった時には、解雇の勝ち目を見極めて、対応方法をご案内します。解雇の場合には解雇事由の作成など、手続面でトラブルとなるリスクを抑えます。
また、万が一相手方に弁護士がついたとしても、交渉段階から具体的な主張を重ねて、訴訟にならない方法での解決を模索するなど、ダメージを最小にするための提案をいたします。
弁護士名:稲田拓真 (岡山弁護士会)
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