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Q休職を繰り返す社員に辞めてもらうための方法は

はじめに

「メンタルの不調で休職し、復職したと思ったらまた同じことを繰り返す。前回は適応障害、今回はうつ病と診断名も変わっている。そのたびに他の従業員の負担が増え、正直もう限界だ」――

休職を繰り返す社員への対応に悩む経営者は少なくありません。とりわけ社長自身が労務管理を兼ねている中小企業では、対応に時間を取られ、精神的にも疲弊してしまいます。

「早く辞めてもらいたい」という気持ちは理解できます。しかし、正しい手順を踏まずに動くと、解雇が無効とされたり、多額の賃金・賠償の支払いを命じられたりと、会社側がかえって大きな法的リスクを抱えることになります。

この記事では、休職を繰り返す社員への対応について、経営者が陥りやすい落とし穴・実務上の対応方針・弁護士に相談するメリットを順に解説します。なお、休職期間満了を理由とする退職扱いの具体的な手順については、別記事で解説しています。

 

監修弁護士のコメント

この記事を読んでもお悩みが解決しない場合、やり方はわかったが実際に作業ができない場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

解雇・法的トラブルに発展する前に相談いただく方が、会社に有利な解決を実現できるためです。

解雇がトラブルとなるのはどのようなケースか?

休職を繰り返す社員を解雇・退職扱いにできるかは、「何回休んだか」ではなく「通算した休職期間が就業規則の上限を超えたか」「客観的に就労が不可能か」で決まります。就業規則の整備と医師の判断が鍵になります。

「休職の回数」に着目し通算した期間を見ていない

「もう3回目だ、これ以上は無理だ」という感覚だけで解雇すると、裁判所から「客観的に合理的な理由がない」(労働契約法16条)として無効と判断されるリスクがあります。判断の分かれ目は、繰り返した回数ではなく、①就業規則の休職期間の上限を通算で超えたか、②就労継続が客観的に不可能といえるほどの状態が続いているか、という点です。

実際、休職期間がまだ残っている段階での解雇を無効とした裁判例(東京地裁平成17年2月18日)がある一方、通算規定で上限を超え、主治医・産業医の双方が就労不能と判断し復職の見通しも立たない事案では、解雇を有効とした裁判例(東京地裁令和5年12月14日、最高裁令和7年1月17日決定で維持)もあります。

 

通算規定・診断名に対する備えがない

「同一または類似の傷病による休職は通算する」という規定がない場合、3回休職しても毎回「初回扱い」となり、会社は「休職期間を使い果たした」という事実を示せません。これは退職扱い・解雇のいずれの場面でも会社に不利に働きます。

さらに「前回は適応障害、今回はうつ病」のように診断名が変わると、従業員側から「別の傷病だから通算されない」と主張されがちです。通算規定を「病名が異なる場合でも原因・症状が共通する場合を含む」と具体的に定め、産業医に「前回と同一・類似の傷病か」の意見書を取得しておくことが有効な備えになります。

 

復職の可否を会社だけで判断してしまう

主治医の診断書に反して会社が独自に「就労不能」と判断して解雇すると、「復職可否の判断が恣意的だ」として無効とされることがあります。

逆に、主治医が「復職可能」としていても、産業医や会社指定医が就労条件や就労可能時期について意見を述べれば、それが会社側の客観的な根拠として機能します。

主治医と異なる結論を出す場合には、必ず第三者的な医師の意見を取得してください。

 

監修弁護士のコメント

経営者側の労働問題は思わぬところにリスクがあります。「常識的に考えたら大丈夫だろう」が通じず、多額の賠償を支払うことになったケースもあります。

まずはリスクの洗い出しと誓約事項の検討の相談をお勧めします。

トラブルなく解決するためのポイント3点は?

対応は、①就業規則を整える、②証拠を固める(記録・産業医の活用)、③休職期間満了による退職を正しい手順で確定させる、の3ステップで進めます。感情に任せた解雇は避け、要件と手順を積み上げることが大切です。

就業規則を整える

すべての対応の前提は就業規則です。

とくに通算規定・短縮規定・期間満了退職規定がないと、いざというときに対応できません。

難しいのは、これらの変更が「労働条件の不利益変更」にあたる点です。

トラブルが表面化してからの変更は「あの社員を狙い撃ちにした」と主張されやすく、変更幅が大きすぎると無効になった裁判例(京都地裁令和7年10月2日)もあります。

弁護士が入れば、現在の規定のリスク診断から、有効性を確保するための文言・同意取得・移行措置まで設計できます。

証拠を固める(記録・産業医の活用)

退職交渉でも訴訟でも、客観的な記録が会社の最大の武器です。休職・欠勤の記録、医師の診断書、面談議事録を系統的に残し、あわせて産業医の意見書で「就労不能」「傷病の同一性」を裏づけておきます。

とくに重要なのが産業医の活用です。主治医が「復職可能」としていても産業医が就労条件について意見を述べれば会社の立場は強くなり、「前回と同一・類似の傷病」との意見書は通算規定を適用する根拠になります。

難しいのは、「後で争点になる証拠」を、争いになる前に見極めて残しておく点です。何をどの形式で残せば証拠として通用するか、産業医の意見書に何を盛り込んでもらうかは、紛争経験がないと判断しにくい部分です。弁護士は、想定される反論から逆算して「今から固めるべき証拠」を具体的に指示できます。

 

休職期間満了による退職を、正しい手順で確定させる

休職を繰り返す社員は欠勤が続くため、退職を話し合う場自体を持てないことが多く、実務では「休職期間満了による退職」が中心になります。

ここで重要なのが、退職を判断・通知するまでの手順です。

少なくとも、(1)就業規則上の休職・退職の要件を満たしていること、(2)繰り返された休職の原因に共通性があり、通算規定を適用できること、(3)会社として復職に向けた配慮(産業医面談の実施や条件調整の打診など)を尽くしたが就労に至らなかったこと、といった点を積み上げたうえで退職を判断します。

そして、その経緯を退職通知書に十分に記載することが、後の紛争リスクを大きく下げます。

単に「期間満了により退職」と一行で通知するのではなく、上記の要件充足や会社の対応経緯を具体的に盛り込み、第三者が読んだときに「これは退職となってもやむを得ない」と納得できる内容にしておくことがポイントです。

難しいのは、この「正しい手順」と「通知書の内容」がかみ合っていないと、退職扱いが無効とされ、退職日以後の賃金の支払いを命じられかねない点です。手順の設計から通知書の作成までを弁護士が担うことで、第三者の目に耐える退職を確定させられます。退職を判断する前に、一度欠勤・休職について弁護士に相談することをお勧めします

 

監修弁護士のコメント

「対策はわかったが具体的にどうすべきか」「文書を作るのが大変だ」等のお悩みを抱えている場合には弁護士に相談することをお勧めします。

相談時に弁護士が個別の案件に応じた解決策を提案いたします。

弁護士に相談するメリットは?

弁護士は、就業規則の整備から証拠固め、退職通知書の作成、紛争対応まで一貫して会社側を支えます。トラブルの予防にも有効で、相談した段階で方向性が定まり、それだけで解決に近づくケースもあります。

弁護士が解決のためにできること

休職を繰り返す社員への対応は、各段階で法的な判断が求められます。弁護士は、就業規則の整備から退職・紛争対応まで、次のような形で会社側をサポートします。

  • 就業規則の整備・リスク診断:通算規定・短縮規定・期間満了退職規定の点検と修正案の作成、「この社員に今の規定で対応できるか」の個別診断
  • 書類の作成:休職命令書、就労禁止通知書、産業医への情報提供書、退職通知書など、各段階で必要な書面の文案作成
  • 産業医との連携支援:情報提供の仕方や意見書に盛り込むべき内容についての助言
  • 退職の判断・通知:正しい手順の設計と、第三者の目に耐える退職通知書の作成
  • 労働審判・訴訟への対応:紛争に至った場合の代理人対応
 

トラブル予防のために弁護士ができること

弁護士の関与は、紛争が起きてからだけでなく、起きる前にこそ効果を発揮します。就業規則の整備と書式の準備を平時に済ませておくことで、いざというときの対応が格段に楽になります。

休職の通算規定や期間満了退職規定は、トラブルが表面化してから慌てて変更すると「狙い撃ち」と主張され、無効とされるリスクがあります。問題が起きていない平時のうちに規定を整え、休職命令書などの書式を用意しておけば、実際に休職を繰り返す社員が出ても、決められた手順に沿って落ち着いて対応できます。予防にかけるコストは、紛争が起きたときの負担に比べれば、はるかに小さく済みます。

 

相談だけで解決することも

弁護士に依頼して全面的に対応を任せなくても、一度相談するだけで方向性が定まり、経営者自身の対応で解決に至るケースは少なくありません。まずは気軽に相談することをお勧めします。

「今の就業規則で対応できるのか」「どの書類を、どの順番で出せばよいのか」がはっきりしないために、動けずに時間だけが過ぎてしまう経営者は多くいます。相談の場で現状を整理し、進め方の道筋が見えるだけで、その後はご自身の対応でスムーズに解決できることもあります。時間を取られたくない、面倒なことは避けたいという経営者ほど、早い段階での相談が有効です

 

弁護士は紛争を踏まえた上での解決策を提案できます。

まず相談して「自社の方向性が合っているのか」「もっといい方法はあるのか」を確認してみるのがお勧めです。

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

この記事を書いた弁護士の紹介

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

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