〒700-0818 岡山県岡山市北区蕃山町3-7 両備蕃山町ビル5階
JR岡山駅東口より徒歩15分/駐車場:2台あり)

受付時間

9:00~18:00
定休日:土曜、日曜、祝日

お気軽にお問合せ・ご相談ください

080-9137-2052

中途採用で即戦力の営業職を採用したが戦力にならなかった。このようなケースはよく耳にします。

今回は、最新裁判例を題材にして、対応策を解説します。

 

設例

当社は従業員12名の小さなコンサル会社です。

今回、当社は、求人広告で「応募要件の必須条件」として「富裕層向けの折衝経験を有する者,富裕層の人脈を持ちかつ人脈構築が得意な業績上位者の者」と記載し、求人を出しました。そうしたところ、Xが応募しました。Xは顧客候補として40人ものリストを出したので、当社は、Xを年俸1000万円で採用しました。

ところが、Xはリストの人物との間で個人的な繋がりを持っておらず、また、2か月で1件しか顧客候補を当社に連れてこれなかったのです。

試用期間が満了するタイミングでXに辞めてもらう必要がありますが、解雇して良いのでしょうか。

 
 

裁判所の考え方

設例の事案は、東京地裁令和7年6月13日判決(労働判例1338ー55)の事案を題材とした事案です。会社は2か月経過時点でXを解雇し、Xが復職を求めて争ってきました。

裁判所は、会社の解雇を無効と判断し、賃金1年半分1500万円の支払いを命じました。

その理由は次のとおりです。

 

顧客候補のリストの大半が個人的な知り合いでなかったことを理由とするもの

裁判所は、会社の代表者が面接時に、リストの人物とXとの繋がりを質問していなかったことを踏まえ「原告と本件名簿の掲載者との人的関係の存在及び内容が,本件労働契約を締結する上で必要な条件であったとも認められない」と判断しました。

営業として結果が出せなかったことを理由とするもの

 裁判所は、商品の単価が高額であることからすれば営業社員が短期間で成果を出すことは困難であることや、被告の指導は、営業の手法等について具体的な指導を行っているものではないことから、改善見込みがないと言えず、不適格とは言えないと判断しました。

結論

 そして、裁判所は、原告が相当額の賃金の支払を受ける中途採用者であることを考慮しても,解雇は無効であると判断しました。

設例の会社は今後どのようにすべきか

Xのような社員をそのまま雇い続けてしまえば、人件費ばかりがかかりますし、同僚からも不満が生じます。他方で、早急な解雇の結果、裁判例のように多額の支払いを命じられるリスクも避ける必要があります。

 

結果が出ていない原因を特定して指導する

営業職の結果が出ない場合、その原因が営業職の個人にあるのか、市場等にあるのか、裁判所は非常に気にかけるところです。また、裁判例のように高額な商品は短期で結果が出ないと裁判所は考えます。

そこで、Xの結果が出ていない原因が、顧客の質問に適切に回答できていない等、Xに原因がある場合には、その原因を特定して指導を行うことになります。

具体的には、どのような問題点があるのかを指摘する業務指示書を作成し、改善を求めることになります(例:顧客からサービスのコストについて質問された際に、パンフレットの内容と異なる内容を伝えた等)。

設例の場合、試用期間は残り1か月間ありますので、少なくとも1か月間は、こんを詰めた指導をすることになります。

 

指導を繰り返しても改善がない場合には退職に向けた話し合いをする

結果が出なかったことを理由とする営業職の解雇は非常にハードルが高いです。

このため、指導を経ても改善がない場合には、退職勧奨を行うことになります。

設例の場合は、試用期間の満了頃に

  • Xがリストについて個人的関係があると誤信させたこと、
  • 実際に入社後にも営業先で問題行動があったこと、
  • 会社は指導をしたが改善されなかったこと
  • このため、XはY社にはむかず、残り続けることはXにとっても大変であること

等を説明して、退職に向けた提案をすることになります。

 

労働問題に強い弁護士のサポートをうける

設例の事案は従業員12名程度の小さな会社です。

このため、上記の指導や退職勧奨にばかり時間をかけることはできません。

労働問題に強い弁護士がサポートに入ることで、効率的に

  • 問題行動の原因分析
  • 改善のための業務指示書の作成
  • 退職勧奨の説明・説得

を行うことができます。

 

そもそも採用しないためのポイント

採用の前提となる内容は口頭で質問する

裁判例の事案では、Y代表者は、Xが提出したリストについて個人的なつながりがあることを前提に、Xを採用しました。しかし、Y代表者は、面接時に、Xに対して、リスト記載の人物と個人的なつながりがあるのかを質問していませんでした。

仮にY代表者が質問をしていれば、Xは個人的な人脈がないことを回答し、Y代表者も誤解することなく不採用とできたはずです。Xが個人的なつながりがあると嘘を述べた場合には、そのことを理由とした経歴詐称による解雇もしやすくなったはずです。

このため、トラブルの予防にあたっては、会社が採用の前提とする事項については、面接時に質問することが重要となります。

 

質問の具体例

  • このリストと貴方との関係はどのようなつながりがあるのですか。
  • 前職ではどのような方法で人脈を広げていったのですか。
 

面接のやり取りは記録に残す

質問の回答は、記録に残します。

履歴書の写しにメモを残したり、面接シートを作りメモを残したりして、後に想定と違った場合に備えることが重要です。

 

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

本記事の監修弁護士

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
080-9137-2052
受付時間
9:00~18:00
定休日
土曜、日曜、祝日

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

086-201-1816

<受付時間>
9:00~18:00
<定休日>
第1・第3・第5土曜、日曜、祝日

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

新着情報・お知らせ

2025/10/01
ホームページを公開しました。
2025/09/30
「サービスのご案内」ページを更新しました。
2025/09/29
「事務所概要」ページを作成しました。

弁護士稲田拓真

住所

〒700-0818 岡山県岡山市北区蕃山町3-7 両備蕃山町ビル5階

アクセス

JR岡山駅東口より徒歩15分
駐車場:2台あり

受付時間

9:00~18:00

定休日

第1・第3・第5土曜、日曜、祝日