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従業員4名などの小さな企業でもハラスメント対策は人ごとではありません。今回は4人の事業場でのハラスメント調査に関する裁判例を参考に対応を解説します。

設例

当社は従業員4名のガソリンスタンドです。

従業員のうち女性従業員1名(38歳)は、男性従業員(28歳)から業務中の自分の姿を服の上から盗撮されていると述べて、適応障害になったとの診断書を出して休みはじめています。

「法改正でハラスメント対応が必要になった」とは言いますが、当社のように従業員4人の小さな会社でも対応は必要なのですか。

法務部も人事部もないし、第三者委員会なんてものを準備する時間も費用もない場合にはどうすればいいのですか。

 

参考となる裁判例

ハラスメント対策は企業規模を問わず事業者の法的な義務となっています。このため、従業員が4人の小さな事業場等であっても調査対応は必要です。

例えば、鳥取地裁倉吉支部令和7年1月21日判決労働判例1333号45頁という事案が参考になります。

この事案では従業員4人程度の事業場で設例のような事件が起きたものです。裁判所は、「原告に対する詳細な事情聴取はおろか、被告乙山に対しては速やかな事情聴取さえ行わず(中略)原告に対しては、Eサービススタンドへの配置換えを打診した程度で、特段の配慮ある行動をとっていない。」ことを理由に、ハラスメント自体の賠償と合わせて100万円を超える賠償を命じています。また、令和5年10月の訴え提起から判決のでた令和7年1月までの実に1年超の間、会社は対応を余儀なくされました。

法的にも実務的にも小さな会社であっても、ハラスメント対応は欠かせません。

取るべきハラスメント対応3点

ただし、ハラスメント調査と言っても第三者委員会を設置するなどの方法は不要です。

法務部や人事部がなくとも、担当者がしっかりと話を聞き調査することで義務を果たすことができます。

具体的な対応3点を見ていきましょう。

被害者の聞き取りと事実調査

被害者から被害者の考える事実関係について聞き取りを行うとともに、証拠の確保を行う必要があります。

上記の裁判例では防犯カメラの映像が証拠としてありました。

 

※裁判例の中には被害を矮小化するような聞き取りが対応として不適切とされたケースがあります。また「そっとしておいてください」等の発言を受けてそのまま事態を放置したことを不適切であるとした事案もあります(京都地裁平成13年3月22日判決)。

→ヒアリング調査について内部の人員が不足し困難な場合には、弁護士等に依頼することも一つの選択肢です。

 

※上記の裁判例で、会社は、「原告の申告を前提としても、服を着た姿を撮影されたもので盗撮事件とまではいえないと捉えていた」ようです。しかし、このような撮影であってもハラスメントや不法行為になるものです。

ハラスメントとなりうるか否かは会社が独自に判断するのではなく、労働問題に強い弁護士に相談しながら対応を進めることが重要です。

 

加害者からの聞き取り

本件では加害者(行為者)からの聞き取りをしていなかったことが安全配慮義務違反の原因として指摘されています。

申告自体からハラスメントではないとされるケースを除いては、加害者(行為者)とされた側から聞き取り調査をすることが必要となります。

 

上記の裁判例は、加害者(行為者)の退職を避けようとしてヒアリング等をしなかったとされています。小さな事業場で波風を立てたくないと考えたことは理解はできますが、「被害者と加害者の優先順位を見誤った不適切なものといわざるを得ない。」との判決での非難は避けられません。

結論を踏まえた処分等の対応

上記事案では、会社は、被害者の休職を認めるなどの配慮はしています。

しかし、会社は、加害者の配置転換をせず、反対に被害者の異動を提案し、被害者が異動を拒否したので何らの異動を行いませんでした。

盗撮行為が認定できる事案で、被害者と加害者の切り離しを試みてすらいないのは不適切という他ないと考えます。

なお、事業所が他にないケースでは配置換えができません。そのようなケースでは、加害者に対する懲戒処分やシフトの調整などを試みることになります。行為態様が悪質であり加害者を辞めさせる必要がある場合には、話し合いにより退職を試みるなどの工夫が必要です。

 

結論を被害者に伝える

裁判例の中には、被害者に調査結果を伝えなかったこと自体が安全配慮義務違反になるとしたケースがあります(東京地裁令和04年04月07日判決労働経済判例速報2491号3頁)。

調査結果が出た場合には、その結論を伝えることになります。

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

監修弁護士の紹介

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

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