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病気で長期間欠勤している従業員がいてお悩みではありませんか。

今回は、従業員が20名程度の小さな事業所での対応の失敗例を参考に、労働問題に強い弁護士が対応を解説します。

 

病気で欠勤する従業員とのトラブルを防ぐポイント

  • 解雇に失敗した事案を知ること
  • 解雇の前に診断書の提出を求めること
  • 診断書の提出を拒否する労働者には指導等を行うこと
  • 診断書に不明な点がある場合には主治医に質問すること
 

※この他、就業規則の休職事由の有無や休職発令の有無、診断書を踏まえた復職可否の判断等も注意すべきポイントとなります。別記事で別途ご案内します。

解雇に失敗した事案を知る

病気で長期間欠勤する従業員がいる対応の失敗例として参考になるのが水戸地裁令和06年04月26日判決です。

 

この事案では、原告Bは、職員20名程度の漁業協同組合の労働者です。原告Bは診断書を提出し、抑うつ状態を理由に11か月欠勤したため、漁業協同組合は、原告を解雇しました。ただし、解雇にあたって、協同組合は原告Bに診断書を提出するように指示していませんでした。

この解雇に対し、原告は、復職と休業期間および解雇後の期間の賃金支払いを求め、協同組合を訴えました。

裁判所は次のように判断して、解雇を無効と判断しました。

 

・ 被告としては、原告Bの解雇を検討するに当たり、原告Bの病状の詳細を把握し、その状態に応じて配置可能な業務の有無も含め、原告Bの職場復帰の可能性を慎重に検討することが求められるというべきである。

・ 被告は、原告Bが労働組合に加入して以降、病状等の報告を一切求めることなく、原告Bが精神の障害により業務に耐えられないとして解雇しており、その判断は早急に過ぎるものといわざるを得ない。

 

最終的に、この事案では、被告に対し、原告Bの復職と賃金3年分の支払いが命じられています。

解雇の前に診断書の提出を求めること

本件では、労働者は11か月病気で欠勤しています。このように長期間の欠勤の場合でも、診断書で治療経過等を確認せず解雇するのは「早急に過ぎる」とされてしまいます。

 

裁判所は、過去にもメンタル疾患で休んでいた従業員を解雇した事案で、主治医に確認せずに解雇したこと等は「メンタルヘルス対策の在り方として,不備なもの」と断じて、解雇が不当と判断し、定年までの賃金の支払いを命じたことがあります(東京地裁平成22年3月24日判決)。

 

このため、病気で働けない従業員を解雇する前には、診断書等の提出を求めて、本当に回復可能性がないのか、チェックすることが重要です。

〔弁護士のコメント〕

裁判例の中には、会社が病気の原因である場合に、会社が休業中の労働者に直接接触すること自体が安全配慮義務に違反すると判断した事案もあります(京都地裁平成28年2月23日判決)。

このようなケースでは、会社が直接接触することはできないため、労働問題に強い弁護士などに依頼し、弁護士から連絡を取ることになります。

 

(弁護士のコメント)

失敗例の裁判例では、原告Bから協同組合に、診断書の提出や具体的な病状、復帰時期の見込みの報告等はしていません。

しかし、裁判所は「抑うつ状態にある原告Bに対して、自発的な病状の報告等を求めることは酷」と判断しました。

この判断は、会社が積極的に休業中の労働者の体調に関する情報を取得することが重要であることを示しています。

 

診断書の提出を拒否する労働者には指導等を行うこと

仮に漁業協同組合が診断書の提出を求めたにもかかわらず労働者が拒否したという場合、そのことに対する注意指導を行い、診断書の提出を求めます。

注意指導の記載項目は次のとおりです

 

  • 欠勤や休職の期間
  • 診断書の提出を求めた時期とその理由(例:診断書の期限が切れた等)
  • 現時点で提出がないこと
  • 改めて提出を求めること
  • 提出がない場合には就労できないものと扱わざるを得ないこと

 

→労働問題に強い弁護士であれば、診断書の提出を拒否する従業員に送る文書を代筆することも可能です。

 

診断書に不明な点がある場合には主治医に質問する

主治医の診断書が明確に就労可能と示していないケースもあります。

このようなケースでは、主治医に対して、本来の仕事ができるのか質問することが重要です。

 

例えば、「軽度日中の眠気が出現する以外は気分、意欲とも改善している」、「当初は時間外勤務は避ける必要がある。又、質量ともに負担の軽い業務からスタートして徐々にステップアップすることが望ましい。」との主治医の意見について、就労不能と判断し解雇した事案で、裁判所は、次のように判断しています(東京地裁平成26年11月26日判決)。

 

本件診断書及び本件情報提供書の内容について矛盾点や不自然な点があると考えるならば、本件療養休職期間満了前の原告の復職可否の判断の際にC医師に照会し、原告の承諾を得て、同医師が作成した診療録の提供を受けて、被告の指定医の診断も踏まえて、本件診断書及び本件情報提供書の内容を吟味することが可能であったということができる。

被告は、そのような措置を一切とることなく、何らの医学的知見を用いることなくして〔復職不可と判断した被告の判断は〕原告の復職を著しく困難にする不合理なものであり、その裁量の範囲を逸脱又は濫用したものというべきである

 

裁判所は解雇を無効と判断し、原告の復職と原告に対する賃金2年分1080万円超の支払いを命じています。

 

このため、診断書の記載から復職できるか否かはっきりしない場合には、会社で判断するのではなく、主治医に質問するなどの対応が必要です。

 

それでも病気で欠勤する従業員への対応にお困りの場合

ここまでの対策を取っても解決しないケースでは、岡山の労働問題に強い弁護士にご相談ください。

弁護士が「次の一手は何をすべきか」を提案し、書面づくりなどを代行し、面談の立ち合いなども行います。

労働問題に6年以上取り組んでいる弁護士が直接サポートしますので、素早い回答と的確な助言で「問題社員にどう対応しようか」という悩みを解消できます。

「解雇を争った社員との紛争を1か月半で解決」「経営者に反発する社員の退職に成功」など、岡山でも多くの事案を解決しています。

地元岡山を起点に「経営者の抱える労働問題を解決する」ために尽力いたします。

 

見出し

弁護士名:稲田拓真

2018年3月岡山大学法学部卒業。2019年12月弁護士登録。2024年1月岡山弁護士会に登録。経営者側の労働問題を得意分野とする。

 

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