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小さな会社に一人やる気のない従業員がいて困っている経営者の方とお話をする機会がありました。

今回は、最新裁判例などを題材にやる気のない従業員がいる場合の解決策を解説します。

設例

当方は従業員15名の会社で、美容院への商品を卸しています。

当社の営業職の従業員Aさんは営業職で美容院への御用聞などをやってもらっていますが、その業務の報告書を出していません。私も口頭で提出を促しているのですが、1ヶ月近く出してもらっていない状況です。

当方は小さな会社ですが、Aさんのような業務のやる気がない、サボる銃魚員にはどう対応したらいいのですか。

 

対応のポイント

  • 参考となる裁判例を知る
  • 業務指示書で具体的な業務を命じる
  • 業務をが進まない場合には懲戒処分を行う
  • 退職に向けた話し合いを行う

参考となる裁判例を知る

解雇を否定した裁判例を知る

設例は、東京地裁令和3年9月14日判決を参考にしたものです。この裁判例では半年間、報告書を出さなかったことから、会社は労働者を解雇しました。

そうしたところ、労働者(原告)が解雇無効を訴えた事案です。

裁判所は、次のとおり判断し、怠業を理由とした解雇を無効と判断しました。

 
  • 被告が原告との個別面談の場を設けて、原告に指導、注意をしたり、懲戒処分を貸すことを検討したり、態度を改めない場合には最終的に解雇もあり得る旨を警告したりした形跡はない
  • 面談の場を設ければ、上記のような問題行動を改める可能性があったことは否定できず、原告に改善の見込みがなかったとは認めることができない。
  • このような手続もとらずになされた非違行為等を理由とした本件解雇は、社会通念上相当であると認めることはできない。
 

この事案では、たまたま業績の急激な悪化などによる整理解雇が有効となったため、会社が多額の賃金支払いを免れました。

しかし、設例の会社のような会社が解雇した場合には、解雇が無効となり、解雇期間中の賃金の支払いを命じられるリスクがあります。

 

解雇を認めた最新裁判例を知る

他方で、札幌地裁岩見沢支部令和5年8月17日判決・札幌高裁令和6年3月22日判決(労働判例1339号)は、怠業を理由とする解雇を有効とした事案です。

この裁判例は、職員10名程度の事務局を抱える商工会議所の従業員が不適切な伝票処理の修正を「忘れてた」等と述べて半年間サボった事案です。

会社(商工会議所)は、令和2年12月8日から令和3年6月7日までの半年間に渡り7回業務指示書を出し、途中に1回出勤停止2週間の懲戒処分を行った上で、解雇(懲戒解雇)を行いました。

そうしたところ、A(原告)が解雇は不当であるとして、雇用契約があることの確認と、毎月25万円の賃金支払いを求めて提訴しました。

裁判所は、次のとおり判断して解雇を有効と判断しました。

 
  • 原告の業務はいずれも実行が容易であるか又は少なくとも着手は容易な業務である。
  • しかし、原告は口頭及び業務命令による多数会の指示等が繰り返されていただけでなく、懲戒処分を経ても、同種同様の業務命令違反と怠業を続けていた
  • 業務命令及び指示を無視し、業務を放置すると言った原告の行為及び職務態度等は、(中略)労働契約の根本につき、職員数10名程度と小規模である被告の事務局における職場の秩序(企業秩序)を揺るがせる非常に重大な含む原則違反である
  • これらの理由等から本件懲戒解雇は有効である。
 

懲戒解雇が有効となったポイントは次の3点です。

  • 原告の業務について繰り返し業務指示が出されていたこと
  • 原告の指示違反に対して懲戒処分(出勤停止)を行っていること
  • これらにもかかわらず原告が業務を怠り続けたこと

 

裁判例からわかること

サボり(怠業)ややる気のない従業員については、次の3点が重要とわかります。

  • まずはしっかりと業務指示を出すこと
  • サボり(怠業)についての改善指導を行うこと
  • 改善がないことを裏付けること

そして、これは従業員10人程度の中小企業でも重要になるということです。

 

業務指示書で具体的な業務を命じる

複数の事件を担当していると、サボる従業員は、「自分がやりたい仕事だけをやってお金をもらいたい」と考える傾向があります。

しかし、労働契約で労働者がすべきなのは「自分がやりたい仕事」ではなく「会社から指揮命令された仕事」です。この原則を勘違いし、「やりたくない仕事をやらせるのはパワハラ」等と言い出す従業員もいました。

 

そこで、まずは業務指示書などの書面で「何をすべきか」はっきりと伝えることになります。

 

貴殿は、2025年●●月●●日から●●日までの営業報告書を、本日時点で提出していません。

営業報告書は、その日のうちに提出するように指示しており、当社は●●月●●日には、貴殿に対して、それ以前の報告書の提出を指示しています。しかし、貴殿は、「あとでやる」等と述べて提出をしていません。

貴殿の対応は、当社就業規則●●に違反しうるものです。つきましては、上記期間の営業報告書を遅くとも1週間後の●●日までに提出するように本書で命じます。

併せて、営業報告書の提出が遅くなった理由について、顛末書の提出を指示します。

 

業務が進まない場合には懲戒処分を行う

怠業が改まらない場合には、懲戒処分等を行うことになります。

懲戒処分の要件は別の記事でも紹介しています。

就業規則がない場合にはどうするか

就業規則がない場合や周知されていない場合には、懲戒処分を行うことはできません。

この場合には、代表者から書面での厳重注意などの警告を行うことが重要です。

上記東京地裁令和3年9月14日判決も代表者による面談による警告の機会がなかったことを捉えて解雇を無効と判断しています。そのため、解雇等に向けるには、警告等が重要になります。

警告書の具体例は次のとおりです。

 

貴殿は●●年●●月●●日付業務指示書で命じた業務を現時点でも行っておりません。

このため、当社は、貴殿が当社の指示どおりに就労する意欲がないと受け止めざるを得ません。

このように当社の指示に従った業務ができない場合には、解雇を含む重たい処分も検討せざるを得なくなります。

貴殿においては、●●月●●日までに、上記業務指示書で命じた営業報告書の提出(提出日の前日分までのものを作成してください。)を行うよう、本書で改めて命じます。

 

具体的にどのように警告をするのかは、事案によって異なります。例えば、営業で1日ずっと外出しているようなケースで上記の警告書を出しても、不可能な業務指示を命じていると法的に評価され解雇が無効となるリスクも生じます。

労働問題に強い弁護士にご相談し、パワハラにならない合理的な警告書を作ることができます。

 

当職の対応例

当職も全く成果の出ない営業職の対応をしたことがあります。

この社員は指示されたテレアポの電話を行わずに机に座っているままで、高い給与をもらっていました。

このため、当職において、業務指示と警告内容を整理した書面を作成し、依頼者に交付してもらいました。

すると、この社員は、退職届を出して辞めました。

やる気のない従業員は、会社が本格的に指導を行うと、自分の思い通りにならないと考えて辞め、結果的に紛争を予防できるケースもあります。

 

退職に向けた話し合いを行う

上記のような指導を1か月〜3か月程度(長くとも半年程度)行っても改善がない場合には、解雇を視野に入れた対応を取ることになります。

※従業員数が多い会社や事業所が複数ある会社、他の部署がある会社などでは別途の解雇回避努力が必要となる可能性はあります。

 

退職に向けて説明する内容

主に次のような内容を伝えた上で、退職に関する提案や説得を行うことになります。

  • 業務指示を出したこと
  • 業務指示通りの仕事ができていないこと
  • 業務指示違反に対して懲戒処分等を行ったこと
  • その後も指示された業務ができていないこと
  • 当社は従業員も少ない会社であり何度指示をしても仕事をしないとなれば雇い続けることが困難であること
  • このため、当社は、あなたに辞めてもらいたいと考えている。「解雇」という形で辞めると経歴に傷がつく可能性もあるので、あなたのためにも、自ら退職届を出して辞める方が良いと考えている。
 

想定される反論等

仕事をサボりがちな従業員の場合、「仕事内容がパワハラだ」「仕事の負担が重すぎる」「別の仕事をやっていた」等と言い訳をすることも想定されます。

このような場合には、「業務の内容は他の従業員も行っているものであり、過重な業務ではなく、パワハラには当たらない」とか「別の仕事をやっていたとしても、それは支持された仕事をやらないことを正当化できない。他の人は、別の仕事と両立しながらこの業務を行っている」等と反論することになります。

労働問題に強い弁護士であれば、事案に応じた想定問答を整備することで、このような言い訳に惑わされずに対応できます。

 

退職の合意ができた場合

退職で合意できた場合には、その場で退職届を出してもらいます。

これは「辞めます」等の発言だけでは、本当に退職の意思があったのかが争いとなり、退職合意が成立していなかったとされるリスクがあるためです。

やむを得ず解雇に踏み切る場合

退職で合意できない場合で解雇に踏み切るときには、あらかじめ解雇通知書を準備し、その場で読み上げて交付することになります。また、解雇予告手当の支払いも忘れず行うことになります。

それでも問題社員にお困りなら

ここまでの対策を取っても解決しないケースでは、岡山の労働問題に強い弁護士にご相談ください。

弁護士が「次の一手は何をすべきか」を提案し、書面づくりなどを代行し、面談の立ち合いなども行います。

労働問題に6年以上取り組んでいる弁護士が直接サポートしますので、素早い回答と的確な助言で「問題社員にどう対応しようか」という悩みを解消できます。

「解雇を争った社員との紛争を1か月半で解決」「経営者に反発する社員の退職に成功」など、岡山でも多くの事案を解決しています。

地元岡山を起点に「経営者の抱える労働問題を解決する」ために尽力いたします。

 

 執筆者の紹介

弁護士名:稲田拓真

2018年3月岡山大学法学部卒業。2019年12月弁護士登録。2024年1月岡山弁護士会に登録。経営者側の労働問題を得意分野とする。

 

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