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Q 遅刻を繰り返す社員への対応は?

はじめに

遅刻や欠勤を繰り返す社員がいると、周りの従業員の不満がたまり、社長ご自身も対応に頭を悩ませることになります。

とはいえ、「何度も遅刻するのだから」といきなり解雇や厳しい処分に踏み切ると、後で「不当解雇だ」と争われ、かえって時間もお金も取られかねません。

本記事では、「朝起きられない」「体調が悪い」といった理由で遅刻を繰り返す社員への対応について、裁判例を踏まえてトラブルにならない進め方を整理します。

監修弁護士のコメント

この記事を読んでもお悩みが解決しない場合、やり方はわかったが実際に作業ができない場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

解雇・法的トラブルに発展する前に相談いただく方が、会社に有利な解決を実現できるためです。

Q 遅刻を繰り返す社員の解雇がなぜトラブルになるのか

遅刻を繰り返す社員でも、いきなり解雇するとトラブルになりやすいのが実情です。

裁判所は、①これまで注意・指導や処分をしてこなかった、②指導の内容や伝え方が不適切だった、③体調不良など遅刻の原因を確認しなかった、といった会社側の対応の不備を重視して、解雇を無効と判断してきました。

解雇できるかどうかは「遅刻の多さ」だけでなく、そこに至るまでの会社の対応の積み重ねで決まります

これまで遅刻を注意・指導してこなかったケース

遅刻が長く続いていても、会社がそれまで注意や懲戒処分をしてこなかった場合、いきなりの解雇は無効になりやすい傾向があります。

加えて、遅刻自体が少ない、本人が反省している、他の遅刻者との処分の均衡を欠くといった事情も、解雇の相当性を否定する方向に働きます。

例えば、約1年で欠勤27日・遅刻早退99回に及んだ社員でも、解雇まで懲戒処分で警告した事実がなかったことなどから解雇が無効とされた例があります(東京地裁昭和50年9月11日決定)。回数の多さだけでは足りず、注意・処分を重ねた記録が欠かせません。

また、寝過ごしで放送事故を2度起こしたアナウンサーの解雇でも、最高裁は、故意ではなく過失であったこと、直ちに謝罪していたこと、同じく寝過ごした担当者はけん責処分にとどまり均衡を欠いていたことなどから、解雇を「いささか苛酷にすぎ」るとして無効としました(最高裁昭和52年1月31日判決・高知放送事件)。

遅刻の回数がそもそも少ない、本人が反省している、他の遅刻者に比べ処分が重すぎるといった事情があると、解雇はいっそう無効と判断されやすくなります

 

指導の内容や伝え方が不適切だったケース

遅刻をなくそうと指導しても、その内容や伝え方が行き過ぎるとパワハラと評価されるおそれがあります。指導が違法とされると、慰謝料に加え、それを前提とした欠勤や解雇まで無効と判断されるリスクが高まります。

例えば、体調不良で欠勤・遅刻の多い従業員に対し、店長が「強い解熱鎮痛剤を飲んででも出勤すべき」といった趣旨の発言をしたり、体調や改善状況を確認しないままシフトに入れなかったりした事案では、これらの言動が「正当な業務上の注意指導を逸脱した違法なパワーハラスメント」と判断され、慰謝料が認められました(東京地裁令和7年10月30日判決)。

指導そのものは必要ですが、体調不良の訴えを頭ごなしに否定したり、事実上の退職に追い込んだりする対応は、かえって会社の立場を弱くします

遅刻の原因(体調不良など)を確認せずに解雇したケース

遅刻の背景に体調不良や病気がある場合、原因を確認せずに解雇すると無効になりやすくなります。会社には、受診や休職といった回復の機会を与えたうえで対応を検討することが求められるためです。

最高裁は、病気による妄想を原因とする欠勤の事案で、「精神科医による健康診断を実施するなどした上で、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべき」であり、これをせずにした解雇は無効と判断しました(最高裁平成24年4月27日判決)。

「朝起きられない」「体調がすぐれない」といった訴えが続くケースこそ、まず原因を確認し、必要に応じて診断書の提出を求め、休職などの機会を与える段取りが重要です。

 

監修弁護士のコメント

経営者側の労働問題は思わぬところにリスクがあります。「常識的に考えたら大丈夫だろう」が通じず、多額の賠償を支払うことになったケースもあります。

まずはリスクの洗い出しと誓約事項の検討の相談をお勧めします。

トラブルなく解決するためのポイント3点は?

トラブルを避ける鍵は、①遅刻を客観的に記録し、②段階を踏んで指導・処分を重ね、③体調不良が疑われれば受診・休職の機会を与える、という順序を踏むことです。この段取りをきちんと経れば、最終的な解雇が有効と認められる可能性も高まります

手順1 遅刻の時間・頻度を客観的に記録する

まずはタイムカードなどで遅刻の日時・回数・遅刻時間を客観的に記録します。

「なんとなく多い」という印象ではなく、数字で示せる状態が、後の指導・処分や解雇の正当性を支える土台になります。

難しいのは「問題」といえる程度の線引きで、正常な出勤が全労働日の8割を下回るかが一つの目安とされることもありますが、中抜けや私的行為の扱いなど数え方で評価は変わります。

どの数字をどの粒度で残せば裁判でも通用するのか、後戻りのない形で固めるために、早めに問題社員の対応を弁護士に相談するのが安全です。

手順2 段階を踏んで指導・注意を行い、記録に残す

記録がたまったら、いきなり解雇せず、口頭注意→書面注意→懲戒処分と段階を踏んで改善を促し、その都度記録に残します。

実際、けん責・出勤停止・降格を重ねたうえでの解雇を有効とした裁判例(東京地裁令和元年8月1日判決)や、遅刻のたびに注意・指導を繰り返した末の雇止めを有効とした裁判例(東京地裁平成26年8月25日判決)があります。

難しいのは指導の「伝え方」で、体調不良の訴えを頭ごなしに否定したり感情的に追い詰めたりすると、それ自体がパワハラと評価されかねません。

他の遅刻者との処分の均衡も意識しつつ、証拠として有効かつパワハラにならない形に整えるには、問題社員の対応を弁護士に相談するのが確実です。

手順3 体調不良が疑われる場合は受診・休職などの機会を与える

「朝起きられない」「体調が悪い」といった訴えがあるときは、解雇の前に診断書の提出を求め、必要なら休職などの回復の機会を与えます。

原因を確認せずに解雇すると無効になりやすいため、この一手間が結果的に会社を守ります。難しいのは「本当に病気か」「病気と遅刻に因果関係があるか」の見極めで、関係が不明なら休職は不要で通常の指導・処分で足りる場合もあれば、医学的に所定どおりの勤務が難しいと判断されれば休職の発令が必要になる場合もあります。

本人に「出勤するなという意味か」と反発されたときの伝え方も含め、対応を誤ると新たな火種になりかねないため、問題社員の対応を弁護士に相談するのが安全です

監修弁護士のコメント

「対策はわかったが具体的にどうすべきか」「文書を作るのが大変だ」等のお悩みを抱えている場合には弁護士に相談することをお勧めします。

相談時に弁護士が個別の案件に応じた解決策を提案いたします。

弁護士に相談するメリットは?

弁護士に相談する最大のメリットは、記録・指導・処分・解雇という一連の対応を、後で無効と判断されない形で進められることです。加えて、トラブルを未然に防ぐ体制づくりや、相談だけで解決してしまうケースまで、時間を取られずに任せられます

問題解決のサポートが受けられる

遅刻を繰り返す社員への対応は、どの段階でも判断を誤ると無効になりかねません。弁護士が入れば、各場面で「今すべきこと」を示し、書面作成から交渉まで代わりに担うため、社長が本業の時間を割かずに済みます。具体的には、次のようなサポートを行います。

  • 遅刻・欠勤の記録の取り方や、解雇・雇止めが可能な水準に達しているかの見極め
  • 注意書・指導書・懲戒処分通知書など、証拠として有効な書面の作成・チェック
  • パワハラと評価されない指導の進め方や伝え方のアドバイス
  • 診断書の提出命令や休職発令の要否、就業規則に沿った手続の確認
  • 退職勧奨や解雇に踏み切る場合の進め方、本人・代理人との交渉の代行

トラブルの予防ができる

弁護士のメリットは、起きた問題の解決だけではありません。遅刻をめぐる紛争の多くは、就業規則の休職・診断書提出・懲戒に関する規定が不十分だったり、日頃の記録や指導が残っていなかったりすることが原因です。

弁護士が事前に関与すれば、これらの規定を実務で使える形に整え、記録・指導のルールを社内に定着させておけます。問題社員が現れてから慌てるのではなく、平時のうちに備えておくことが、最も費用対効果の高い対応です

相談しただけで解決できるケースがある

実は、相談した段階で解決に向かうケースは少なくありません。正しい対応の順序が分かれば社長自身で進められることも多く、「会社が本気で対応している」と伝わることで社員が自ら態度を改めることもあります。

例えば「その遅刻が1か月で何件も生じており、始業時刻に出勤するという当たり前のことができていない。

本当に体調不良なら受診して診断書を出してください」と、勤怠を問題視していることを正面から、かつ違法にならない形で伝える——この一手だけで状況が動くこともあります。まずは無料相談で現状を整理するだけでも、次の一歩がはっきりします

弁護士は紛争を踏まえた上での解決策を提案できます。

まず相談して「自社の方向性が合っているのか」「もっといい方法はあるのか」を確認してみるのがお勧めです。

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

この記事を書いた弁護士の紹介

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

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