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2025年12月05投稿
部下から上司に「逆」パワーハラスメントを行う問題社員にお悩みではありませんか。
今回は逆パワハラを行う問題社員への対応を解説します。
当社の総務部の部下であるXは、A次長が自分のパソコンの画面を見ていると感じたことについて、A次長に「いい歳のおっさんが目くじらをたてるところではありません。・・・気持悪いので、そういう行為は止めてください。」とメールを送りました。
また、Xは、Aが担当業務で単純ミスをしたことについて、「総務のトップとして、頼りにならないにも程がある」と記載したメールを送りました。
A次長は、Xさんに威圧感を感じ、指導もできなくなっていると述べています。
当社としては、Xさんに辞めてほしいと考えていますが、どのように対応するべきでしょうか。
逆パワーハラスメントをする従業員に辞めてもらう必要があるとの会社の考えは間違っていないと考えます。
しかし、辞めさせたいと感じても、解雇は避けるべきと考えます。
例えば、次の裁判例は、設例のような言動等をした従業員を解雇した会社が、従業員から訴えられた事案です。
裁判所は、解雇を無効と判断し、従業員(X)の復職とXに450万円を支払うように会社に命じました。
参考:東京地裁令和6年3月21日判決
・Xは、設例のような言動をしたことにより懲戒処分を受けました。その後、Xは懲戒処分が不当である旨述べる文書を提出しました。これを受け、会社は、Xが反省していないと判断し、Xを解雇しました。
・裁判所は、Xの言動は不適切であるとした上で、「被告から注意指導をされながらも、これを繰り返したといった事実を認めるに足りる証拠はないから、原告について改善の余地がなかったとはいえない。・・・〔Xが追加提出した文書は〕反省の態度にやや疑問を生じさせる記載があるものの、この限度にとどまり新たに非違行為をしたとかトラブルを生じさせたということまではできない。」等と判断し、解雇は無効であると判断しました。
・その結果、会社は、逆パワーハラスメントをしたXの復職を認め、会社からXに賃金1年1か月分である450万円の支払いを命じました。
逆パワーハラスメントの加害者の解雇には上のような法的リスクがあります。
他方で、加害者を放置すれば、被害を受けた上司も非常に強い精神的な負担が生じ、上司が退職する危険も生じかねません。
このため、設例のXのような従業員に辞めてもらうには、話し合いにより円満退職してもらうことが重要です。
ただし、話し合いの前提として、会社がXに対して懲戒処分を行い、Xの言動が許されないことをXに自覚してもらうことが必要となります。
逆パワーハラスメントをする従業員は、往々にして問題点の自覚がありません。このため、懲戒処分などをせずにXに「辞めてくれ」と言っても、Xとしては「なぜ自分が辞めなければいけないのか」などと反発し、退職に応じない可能性が高いためです。
上記の東京地裁令和6年3月21日判決では、設例の言動を理由とした懲戒処分(降格。基本給が2万円減額となるもの)が行われています。裁判所は、この懲戒処分を有効な懲戒処分と判断しています。
参考:東京地裁令和6年3月21日判決
裁判所は、設例の言動を理由とする懲戒処分(降格)を有効と判断しました。その理由は次のとおりです。
・メールの内容は上司に対する礼節を欠く表現を用いて非難するものであるとともに監督行為を理由に上司を抽象するものでもあるため、「原告の上司に対するハラスメントというべきものであり、職場規律違反に該当し部下と上司との関係といった企業秩序の根幹にあるものを乱す行為である」ため、懲戒事由に該当する
・降格の懲戒処分(グレードが下がり基本給が2万円減額)は、原告に対する懲戒処分が初めてであったことなどを踏まえても、上記の非違行為の内容及び程度に照らせば、重すぎるということはできない。
また、次の裁判例は出勤停止3日(無給)の懲戒処分を有効としました。
東京地裁令和7年3月13日判決
・労働者Xは、上司Aに対し、「上司の仕事に対する能力について尊敬できる殆ど点がありません。もう少し社会人としての能力を上げてください。」「〔やりたくない仕事を命じることは〕人事上の立場を超えた単なるハラスメントであります」等とのメールを送り、上司を困惑させ続けた。このため、会社は、Xに対し、出勤停止3日の懲戒処分を行った。
・裁判所は、Xの問題のある言動は2か月弱で少なくとも3回に及んでいることや、出勤停止期間も3日にとどまっていること等を踏まえ、懲戒処分を有効と判断した。
一般的に、懲戒処分は、譴責<減給<出勤停止<降格<諭示解雇<懲戒解雇 と重くなります。
このため、裁判所は、逆パワーハラスメントに対する懲戒処分は、譴責や言及よりも重たく、諭示解雇などよりも軽い処分が妥当すると考えているようです。
【弁護士のコメント】
懲戒処分をするためには前提として次のような要件をクリアする必要があります。
過去に当職が担当した事件でも、依頼者が就業規則が周知されていることを確認しないまま懲戒処分を行い、従業員が懲戒処分は無効であると訴え、半年以上の間、紛争の対応に追われたケースがありました。
懲戒処分の前に、御社の規定などがこれらの要件を満たすか、労働問題に強い弁護士に確認してもらうことが重要です。
懲戒処分の前には必ず、逆パワーハラスメントの加害者の言い分を確認する必要があります。
この弁明の機会は、上長にとって負担が大きい手続きです。しかし、この手続きを行わないと、それだけで懲戒処分が無効となるリスクが高まります。
逆パワーハラスメントの弁明の機会では次のような内容を確認します。
【弁護士のコメント】
一番重要なのは、「逆パワーハラスメントに当たる発言の内容・時期」の特定です。
設例の事案であれば、ざっくり「逆パワーハラスメントになる発言をした」との言い方では弁明を確認したことになりません。
「いい歳のおっさんが目くじらをたてるところではありません。・・・気持悪いので、そういう行為は止めてください。」「総務のトップとして、頼りにならないにも程がある」などの具体的な言い回しの証拠がないか確認したり、早期に被害者である上司から聞き取りを行ったりして、発言内容を確定させることが重要です。
逆パワーハラスメントを繰り返す従業員は上司に対しても攻撃的であり面談の負担が非常に重い傾向にあります。
そのため、事前に「このように言われたら、会社としてはこのように反論する」という内容を整理した上で、面談に臨むことになります。
当職の経験上、問題社員の中には指導を受けたことそのものを忘れているケースも少なくありません。
また、面談の中で改善点を指摘されたことを「注意を受けた」と受け止めていないケースもありました。
このため、従業員側の発言に翻弄されないように、会社側は、事前に証拠を準備して臨むことが重要です。
(証拠の例)
上記の証拠に基づいて、これまでの指導経過を話した上で、「辞めてもらいたいと考えている」旨をお伝えします。
その際には、問題社員の側が「退職しても良い」と思える提案を用意することもポイントです。
例えば、解雇できるだけの根拠が乏しい場合や、解雇の紛争を避けて早期に解決を目指すケースでは、退職和解金を支払うことが多いです。
また、退職日の変更を調整するなど、雇用保険や有給休暇の残り日数にも目配りした提案が考えられます。
なお、法的に解雇にたりうる言動と証拠がある場合には、退職勧奨に応じないと解雇もありうること、解雇の場合には特別退職金などの加算はないこと、再就職などにあたり振りとなる可能性は否定できないことなどをお伝えすることもあります。
逆パワーハラスメントを繰り返す問題社員の場合、辞めるとの発言が出た場合には合意書や退職届をその場で出してもらうことが重要です。
特に、このような従業員の場合、後から考え直して「やっぱり俺が辞めるのはおかしい」等と言い出して、退職合意が成立したか争いとなるケースもあるためです。
当職の場合、逆パワーハラスメントに近い上長に対する嫌がらせを繰り返した従業員の退職合意に成功した例などがあります。
従業員10名程度の事業所でしたが、厳重注意を活用し、問題のある言動に対するヒアリングなどを進めて行きました。
当職らの対応開始から3か月程度で本人より退職届が出て、円満退職となりました。
「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。
経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。
他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。
弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。
大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。
御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。
弁護士名:稲田拓真
岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。
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