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弁護士が解説・類型別・問題社員の解雇の注意点

2026年1月2日投稿

問題社員とは、勤怠不良、能力不足、規律違反、ハラスメントなどにより職場に悪影響を及ぼす従業員を指します。

「問題社員にはやめて欲しい」というのが、私がよく伺う経営者の本音です。

しかし、辞めさせ方を間違えると、数年間の訴訟に発展し、さらに賃金2年分の支払いを要することになりかねません。

今回は問題社員の類型ごとに、よくあるパターン・解雇の失敗事例・解雇のポイントを解説します。

 

勤怠不良・無断欠勤の多い問題社員

よくあるパターン

  • 入社数か月で「適応障害」などと診断書を提出して出勤しなくなる
  • 「体調不良」を理由に週1回程度の遅刻、早退、欠勤を繰り返す
  • 上司からパワハラを受けたと述べ「適応障害」との診断書を出して欠勤し続ける
 

問題社員の解雇に失敗し460万円の支払いを命じられた事案

最近多い「体調不良」を理由とする欠勤の場合、「休んでいるから解雇する」という対応を取ると、必要な配慮を尽くさずに解雇したとして、解雇が無効となる事案も少なくありません。

次の最新裁判例は解雇が無効となった一例です。

欠勤が長くとも、病気の原因や回復可能性に関する検討をおそろかにすると、解雇が無効となり、多額の支払いを要することがわかります。

 
 
裁判例:11か月の欠勤した問題社員の解雇無効
裁判例:水戸地裁令和6年4月26日判決

・この事案は労働者Bが上司からパワハラを受けて体調不良になったと主張して、11か月間、欠勤し続けたため、会社が解雇した事案です。

・裁判所は、会社がBに病状等の報告を一切求めることなく、原告Bが精神の障害により業務に耐えられないとして解雇した判断は、早急にすぎるとして、解雇を無効と判断しました。

・そして、会社に対し、Bの復職とBへの460万円の支払いを命じました。

対応策のポイント1:体調不良の原因を確認する

傷病による欠勤の場合は特に慎重な対応が必要です。医師の診断書提出を求め、回復見込みを確認します。

また、その原因がパワーハラスメントや長時間労働などの業務に関するものかも確認します。

次のような資料を元に調査を行うことになります。

 

  • 雇用契約書・労働条件通知書
  • タイムカードなどの勤怠記録(出勤状況と労働時間数)
  • 業務日報、メール等の指導記録
  • 医師の診断書
  • (事案によって)医師のカルテ
 
 

対応策のポイント2:回復の機会を与え、医学的な根拠も確保する

病気の原因が労災ではなかったとしても、回復の機会を与えたり、解雇の前に回復の可能性がないかを医師に確認することが重要です。

上記の裁判例は、回復の可能性がないことの確認を怠ったこと等を踏まえ、解雇を無効と判断しています。

休職制度がある場合はその適用を検討し、期間満了後も復職できない場合に解雇を検討します。就業規則と裁判例に沿った対応を取らなければ、それだけで解雇が無効となるリスクを高めるため、就業規則と裁判例を踏まえた対応が欠かせません。

 

能力不足を理由とする問題社員の解雇

能力不足の問題社員のよくあるパターン

  • 高額な報酬で即戦力として採用した営業職が全く注文を取れなかった
  • 看護師として採用したが必要な資料の置き場所などを全く覚えずミスを繰り返した
  • 新卒・未経験者が、誤字脱字を繰り返すなど社会人としての基本的な能力を有してなかった
 

問題社員の解雇に失敗し1500万円以上の支払いを命じられた例

能力不足解雇が有効となるには、(1)契約において要求される能力が明確であること、(2)能力不足が客観的にわかること、(3)企業が十分な指導・教育を行ったが改善の見込みがないこと等が必要です。

そして、これらを欠くケースでは、解雇が無効となることが多いです。

次の裁判例は、特に(2)及び(3)の欠落を理由に解雇を無効とした最新裁判例となります。

 

(東京地裁令和7年6月13日判決)

従業員12名程度(営業職5名)の会社の事案です。

営業職(年収1000万円)である労働者Aが、最初の3ヶ月間で受注を取れなかったこと等から、会社が解雇した事案です。

裁判所は、営業の手法等について具体的な指導を行なっているものではなく、改善の見込みがなかったとは言えないと判断し、解雇を無効としました。そして、会社に対し、Aの復職とAへの1500万円の支払いを命じました。

対応策のポイント

能力不足の問題社員の解雇のポイントは次の3点の確保です。

  • 必要な能力の特定
  • 能力不足の裏付けの確保
  • 複数回の改善指導などの解雇回避措置の裏付け

 

例えば、定期的な面談による指導の記録化、PIP(業務改善計画)の実施、配置転換の検討などが考えられます。

3~6か月の改善期間を設け、具体的な目標設定と定期的なフィードバックを行って記録を残すことになります。

業務命令違反・規律違反を行う問題社員の解雇

問題社員のよくあるパターン

  • 「私の仕事ではない」「やりたくない」等と言って仕事を拒否する。
  • 残業命令や配置転換の命令に従わない
  • 同僚の従業員の悪口を述べる従業員がいる
  • 上司に対して反抗的な従業員がいる
 

問題社員を退職させられず、1500万円以上の支払いを命じられた例

業務指示に従わない・規律に違反する従業員であっても、会社による事実関係の調査が不十分な場合や改善可能性があるような場合には、解雇が無効となります。

次の参考裁判例は、退職勧奨が違法となり多額の金銭の支払いを命じられた事案です。解雇は退職勧奨よりも要件が極めて厳しいため、解雇の場合も、同様の結論になっていました。

 

(参考裁判例:東京地裁令和05年12月07日判決)

商談議事録の提出指示、日報作成指示を拒否した上、上司に対して「ブス」と述べるなどした問題社員の対応に関する事案です。

裁判所は、これ等の問題があるとしても、上司と問題社員との関係悪化の原因が双方にあることや事実関係の確認が不足していたこと等からすれば、退職勧奨は、社会的相当性を欠くと判断し、会社に対し、退職勧奨後の休業やその後の退職扱い後の賃金相当額である1500万円超の支払いを命じました。

(弁護士のコメント)

この他、反抗的な従業員・複数回のトラブルを起こした従業員を解雇したが、解雇が無効となり、3000万円近くの支払いを要した事案もあります(大阪地裁平成30年09月12日判決)。

上司に反抗するような従業員などは雇い続けられないというのは企業の本音として非常によく理解できます。

だからこそ、トラブルにならずに円満に辞めてもらうことが一番重要と考えます。

対応策のポイント

このタイプの問題社員の解雇ポイントは次のとおりです。

 

  • 具体的な業務指示違反・規律違反の事実が裏付けられるか。
  • 問題社員の言い分は確認したか・会社に落ち度はないか。
  • 適法な懲戒処分などを行ったか。

 

懲戒解雇は最も重い制裁で、横領、重大な経歴詐称、重大なハラスメントなど、企業秩序を著しく乱す行為に限られます。基本的には、普通解雇を検討することになります。

 

初回違反でいきなり解雇すると、改善の機会を与えていないとして解雇が無効となるリスクが高いです。

口頭注意→書面警告→譴責→減給→出勤停止と段階的に処分を重ね、改善されない場合に解雇を検討するという流れが基本となります。

 

ハラスメントを理由とする解雇

問題社員のよくあるパターン

  • 新入社員へのあたりがきつい管理職
  • 「馬鹿野郎」などの発言を繰り返す部長
  • 「結婚しないの?」等の発言を行う課長
 

問題社員の解雇が無効となり1800万円以上の支払いを命じられた例

ハラスメントを繰り返す従業員を雇用し続けると若手従業員などの離職を招き組織が壊れます。

もっとも、問題社員は自分の言動がパワーハラスメントであるとの自覚を持っていません。

次の裁判例もパワハラの自覚のない問題社員を解雇した結果、問題社員が会社を訴え、解雇が無効となった事案です。

この裁判例のようにパワハラを繰り返す問題社員であっても、裁判所は、改善の可能性があったとして解雇を認めないことがあります。

 
 

(参考:東京地裁令和6年10月22日判決)

管理職であった労働者Xが5年近くにわたり、複数の部下に対して「馬鹿野郎」「殺すぞ」等との発言を繰り返し、椅子を蹴るなどの暴行を加えたことから、会社が解雇した事案。

裁判所は、懲戒処分を経ずに解雇したこと等を踏まえて、解雇が無効であると判断し、会社に対して労働者Xの復職と賃金として約1800万円の支払いを命じた。

対応策のポイント

  • 就業規則を整備し「ハラスメントを許さない」旨を周知徹底すること
  • 被害申告に対して、事実関係の調査を行い、事実認定を行うこと
  • ハラスメント加害者に対しては懲戒処分を適正に行うこと

 

ハラスメント事案では、事実関係の正確な把握が不可欠です。被害者・加害者・目撃者からの客観的な調査を実施し、調査内容を詳細に記録化します。

処分は行為の内容・程度に応じて相当なものとする必要があります。

 

事前のハラスメント防止体制整備も重要です。就業規則への明記、定期的な研修実施、相談窓口の設置などにより、ハラスメントを許さないという体制をとっているか否かも、問題社員の解雇の適否を判断する際の重要な考慮要素となります。

上記にもかかわらず配置転換の命令を問題社員が無視した場合には、警告や懲戒処分を行うことになります。

問題社員を解雇した場合のトラブルと対応

労働審判・訴訟のリスク

不当解雇として争われた場合、企業側が解雇の正当性を立証する責任を負います。

指導記録、警告書、面談記録、調査報告書など、解雇に至るプロセスを示す証拠が極めて重要です。

証拠不十分なら解雇無効と判断され、多額の解決金支払いや復職を余儀なくされます。

 

(弁護士のコメント)

「不当解雇」が労働裁判となった場合、1年から2年以上の対応を要するケースが多いです。会社としても対応の負担が続きます。

また、解雇が無効となった場合には、それだけの期間の賃金相当額の支払いが必要となりますし、問題社員を復職させる必要も生じます。

問題社員の復職リスク

問題社員がどんなに悪質であっても、解雇が無効となれば、復職させて就労させることが必要となります。

働かせない場合、働かせなかった期間の賃金の支払いに加えて、100万円を超える慰謝料の支払いも必要になります。

そして、復職させた場合、問題社員と働きたくないと考える同僚の従業員が離職するなど、組織が崩壊するリスクが高まります。

 

解決金の支払いリスク

問題社員の解雇が無効なケースの場合、訴訟の中で話し合いにより退職交渉を行うことになります。

一般に訴訟の場合の解決金の相場は、賃金6か月分などと言われます。

もっとも、勤続年数が長いケースなどでは金額が跳ね上がります。

なにより、労働者との合意により辞めてもらう必要があるため、問題社員が納得する水準の金額でない限り、退職させることはできません。このように交渉のイニシアティブを問題社員側に委ねてしまうことが一番の問題となります。

 

弁護士のコメント

私が担当した事案でも、労働組合が強硬姿勢を示したため、退職合意を成立させるのに賃金1年半分以上の支払いを要した事案があります。会社は借入を行い、この解決金を支払いました。

一度解雇してしまうと、その解雇が無効であれば、決着のためには多額の支払いが必要になってしまいます。この事案は、このことを端的に示すものです。

なお、この事案は、解雇する前に労働問題に強い弁護士に相談していれば、問題社員の対応についてサポートでき、解雇せずとも決着し得た事案でした。

当職が労働問題について解雇する前のご相談をお勧めする理由です。

 

弁護士への相談のタイミング

問題社員の解雇について、解雇の実施前に弁護士に相談することをお勧めします。実施後では手遅れのケースが多くなるためです。

相談すべきタイミングは、次の3点が考えられます。

 

  • 問題社員への対応に悩んだ時点
  • 解雇を検討し始めた時点
  • 解雇を通知する前の時点

 

弁護士に解雇前から相談することにより、法的リスク評価、適切なプロセスの構築、必要な証拠の整理が可能となり、不当解雇訴訟リスクを最小化できます。

また、早期に相談することで、「証拠を一から作り直す必要が生じた」という事態を防ぐことができます。我慢の限界が来る前にご相談ください。

 

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

この記事を書いた弁護士の紹介

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

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