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従業員10人の会社のやる気のない従業員への対応

2025年12月28投稿

小さな会社に一人やる気のない従業員がいて困っている経営者の方とお話をする機会がありました。

今回は、最新裁判例などを題材にやる気のない従業員がいる場合の解決策を解説します。

 

設例

当方は従業員15名の会社で、美容院への商品を卸しています。

当社の営業職の従業員Aさんは営業職で美容院への御用聞などをやってもらっていますが、その業務の報告書を出していません。私も口頭で提出を促しているのですが、1ヶ月近く出してもらっていない状況です。

当方は小さな会社ですが、Aさんのような業務のやる気がない、サボる従業員にはどう対応したらいいのですか。

 

結論の概要

  • 参考となる裁判例を知る
  • 業務指示書で具体的な業務を命じる
  • 業務をが進まない場合には懲戒処分を行う
  • 退職に向けた話し合いを行う
 

参考となる裁判例を知る

解雇を否定した裁判例を知る

設例は、東京地裁令和3年9月14日判決を参考にしたものです。この裁判例では半年間、報告書を出さなかったことから、会社は労働者を解雇しました。そうしたところ、労働者(原告)が解雇無効を訴えた事案です。

裁判所は、次のとおり判断し、怠業を理由とした解雇を無効と判断しました。

 
  • 被告が原告との個別面談の場を設けて、原告に指導、注意をしたり、懲戒処分を貸すことを検討したり、態度を改めない場合には最終的に解雇もあり得る旨を警告したりした形跡はない
  • 面談の場を設ければ、上記のような問題行動を改める可能性があったことは否定できず、原告に改善の見込みがなかったとは認めることができない。
  • このような手続もとらずになされた非違行為等を理由とした本件解雇は、社会通念上相当であると認めることはできない。

この事案では、たまたま業績の急激な悪化などによる整理解雇が有効となったため、会社が多額の賃金支払いを免れました。

しかし、設例の会社のような会社が解雇した場合には、解雇が無効となり、解雇期間中の賃金の支払いを命じられるリスクがあります。

解雇を認めた最新裁判例を知る

他方で、札幌地裁岩見沢支部令和5年8月17日判決・札幌高裁令和6年3月22日判決(労働判例1339号)は、怠業を理由とする解雇を有効とした事案です。

 

この裁判例は、職員10名程度の事務局を抱える商工会議所の従業員が不適切な伝票処理の修正を「忘れてた」等と述べて半年間サボった事案です。

会社(商工会議所)は、令和2年12月8日から令和3年6月7日までの半年間に渡り7回業務指示書を出し、途中に1回出勤停止2週間の懲戒処分を行った上で、解雇(懲戒解雇)を行いました。

そうしたところ、A(原告)が解雇は不当であるとして、雇用契約があることの確認と、毎月25万円の賃金支払いを求めて提訴しました。

 

裁判所は、次のとおり判断して解雇を有効と判断しました。

 

・原告の業務はいずれも実行が容易であるか又は少なくとも着手は容易な業務である。

・しかし、原告は口頭及び業務命令による多数会の指示等が繰り返されていただけでなく、懲戒処分を経ても、同種同様の業務命令違反と怠業を続けていた

・業務命令及び指示を無視し、業務を放置すると言った原告の行為及び職務態度等は、(中略)労働契約の根本につき、職員数10名程度と小規模である被告の事務局における職場の秩序(企業秩序)を揺るがせる非常に重大な含む原則違反である

・結論として、本件懲戒解雇は有効である。

裁判例からわかること

サボり(怠業)ややる気のない従業員については、次の3点が重要とわかります。

  • まずはしっかりと業務指示を出すこと
  • サボり(怠業)についての改善指導を行うこと
  • 改善がないことを裏付けること

そして、これは従業員10人程度の中小企業でも重要になるということです。

 

業務指示書で具体的な業務を命じる

複数の事件を担当していると、サボる従業員は、「自分がやりたい仕事だけをやってお金をもらいたい」と考える傾向があります。

しかし、労働契約で労働者がすべきなのは「自分がやりたい仕事」ではなく「会社から指揮命令された仕事」です。この原則を勘違いし、「やりたくない仕事をやらせるのはパワハラ」等と言い出す従業員もいました。

 

そこで、まずは業務指示書などの書面で「何をすべきか」はっきりと伝えることになります。文例は次のとおりです。

 

貴殿は、2025年●●月●●日から●●日までの営業報告書を、本日時点で提出していません。

営業報告書は、その日のうちに提出するように指示しており、当社は●●月●●日には、貴殿に対して、それ以前の報告書の提出を指示しています。しかし、貴殿は、「あとでやる」等と述べて提出をしていません。

貴殿の対応は、当社就業規則●●に違反しうるものです。つきましては、上記期間の営業報告書を遅くとも1週間後の●●日までに提出するように本書で命じます。

併せて、営業報告書の提出が遅くなった理由について、顛末書の提出を指示します。

 

サボりが直らない場合は懲戒処分などを行う

懲戒処分について

文書で業務指示を出しても指示通りに働かない場合には、業務指示違反を理由とした懲戒処分を行うことになります。

懲戒処分は、譴責などの軽い処分を行い、次に出勤停止などの重たい懲戒処分を行うことが多いです。

懲戒処分を少しずつ重くすることで労働者の側に「従わないと解雇される」という危機意識を持ってもらうことに繋げます。

就業規則がない場合にはどうするか

就業規則がない場合や周知されていない場合には、懲戒処分を行うことはできません。

この場合には、代表者から書面での厳重注意などの警告を行うことが重要です。

 

上記東京地裁令和3年9月14日判決も代表者による面談による警告の機会がなかったことを捉えて解雇を無効と判断しています。そのため、解雇等に向けるには、警告等が重要になります。

 

警告書の具体例は次のとおりです。

 

 

貴殿は●●年●●月●●日付業務指示書で命じた業務を現時点でも行っておりません。

このため、当社は、貴殿が当社の指示どおりに就労する意欲がないと受け止めざるを得ません。

このように当社の指示に従った業務ができない場合には、解雇を含む重たい処分も検討せざるを得なくなります。

貴殿においては、●●月●●日までに、上記業務指示書で命じた営業報告書の提出(提出日の前日分までのものを作成してください。)を行うよう、本書で改めて命じます。

【弁護士のコメント】

具体的にどのように警告をするのかは、事案によって異なります。

例えば、営業で1日ずっと外出しているようなケースで上記の警告書を出しても、不可能な業務指示を命じていると法的に評価され解雇が無効となるリスクも生じます。

労働問題に強い弁護士にご相談し、パワハラにならない合理的な警告書を作ることができます。

退職に向けた話し合いを行う

はじめに

上記のような指導を1か月〜3か月程度(長くとも半年程度)行っても改善がない場合には、解雇を視野に入れた対応を取ることになります。

 

※従業員数が多い会社や事業所が複数ある会社、他の部署がある会社などでは別途の解雇回避努力が必要となる可能性はあります。

 

問題点を伝える際に伝えるべき内容5点

まずは退職に向けての話し合いを行うことになります。

主に次のような内容を伝えることになります。その上で、退職に向けた提案などを行います。

 
  • 行ってほしい仕事について文書で業務指示を出したこと
  • しかし、業務指示通りの仕事ができていないこと
  • そのため、業務指示違反に対して懲戒処分等を行ったこと
  • しかし、その後も指示された業務ができていないこと
  • 当社は従業員も少ない会社であり何度指示をしても仕事をしないとなれば雇い続けることが困難であること

仕事をサボりがちな従業員の場合、「仕事内容がパワハラだ」「仕事の負担が重すぎる」「別の仕事をやっていた」等と言い訳をすることも想定されます。

労働問題に強い弁護士であれば、事案に応じた想定問答を整備することで、このような言い訳に惑わされずに対応できます。

 

退職合意ができた場合には退職届を出してもらう

退職が決まった場合には退職届を出してもらうことになります。

退職で合意できない場合で解雇に踏み切るときには、あらかじめ解雇通知書を準備し、その場で読み上げて交付することになります。また、解雇予告手当の支払いも忘れず行うことになります。

もし問題社員が争ってきた場合には、解雇通知書の記載は重要な証拠となります。この通知書の記載が問題となったケースもあります。

労働問題に強い弁護士に相談することで、後の紛争を見据えた解雇通知書を作成するとともに、必要な手続き等を助言することができます。

 
 

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

この記事を書いた弁護士の紹介

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

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