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問題社員への配置転換で法的トラブルを避けるための実務ガイド

2025年12月29日投稿

「問題社員を配置転換したい」という相談を受けることは少なくありません。

しかし、配置転換は適切に実施しなければ、労働審判や訴訟に発展するリスクの高い人事施策です。

本記事では、特に法的問題になりやすい4つのポイントに絞って解説します。

 

設例

当社は従業員数30名程度の会社で、聴覚に関する障がい者向けの製品を販売しています。

当社の従業員Xは、マーケティングの担当者ですが、マーケティングの知識がなく同僚や顧客から「一緒に働きたくない」などの声が出ています。

このため、当社は、Xさんに退職を促しましたが、Xさんは退職に応じませんでした。

そこで、当社は、Xさんを総務アシスタントに配置換えしたいと考えています。総務アシスタントの業務は掃除など同僚との折衝のない業務です。

このような配置転換にはどのようなリスクがありますか。また、どのような準備をして配置転換に臨むべきですか。

 

配置転換が「権利濫用」となりやすいケースはどのようなケースか

退職勧奨の代替手段のような解雇を無効とした裁判例

配置転換の適法性は、東亜ペイント事件(最高裁昭和61年7月14日判決)が示した基準で判断されます。

そして、設例の事案は、東京地裁令和05年04月28日判決を題材としたものです。

裁判所は、次のとおり判断し、配置転換を無効と判断しました。

 

(参考:東京地裁令和05年04月28日判決)

・会社は従業員30名程度の小規模な企業です。

・労働者Xはマーケティング担当者でしたが、B代表は、労働者Xについて、同僚から苦情を発生させたなどの理由で、退職勧奨を繰り返した後に労働者Xを総務部(ゴミ掃除などの部署)に配置転換しました。

・裁判所は、Xの問題行動の具体的な出来事の詳細は不明であり、また、改善に向けた指導の有無や業務内容や配置を検討したかも証拠上明らかではないこと、退職勧奨の直後に配置転換が行われたこと等を踏まえ、配置転換は権利濫用で無効と判断しました。

 

設例のような企業が従業員に退職勧奨を行ったが拒否された後、すぐに遠隔地への配置転換や単純作業への配転を命じるケースです。このような配転は「退職に追い込むための嫌がらせ」と判断され、不当な動機があるとして違法とされる可能性が高くなります。

特に次のようなケースでは、後記のような記録を整えた上で配置転換に臨むことになります。

 
  • 退職勧奨と配転の時期が1〜2ヶ月以内と近接している
  • 配転先が明らかに不利益な職場・職務内容が全く異なる
  • 配転の業務上の必要性が説明できない・裏付けとなる具体的な言動の記録がない

ハラスメント被害者を自称する問題社員の配転

設例とは別の事案ですが、ハラスメント被害があったと訴えるタイプの問題社員を配置転換する際にも注意が必要です。

従業員がパワハラやセクハラを訴えた際に、配置転換した場合、相談を理由とする不利益取扱い(労働施策総合推進法30条の2)の問題が生じかねません。

ハラスメント事案では、被害者ではなく加害者を配転することが原則です。被害者を配転する場合は、次のような点を踏まえた対応になります。

 
  • 被害者本人が異動を希望していることが書面などで裏付けられるか
  • 加害者に対するヒアリングなどの手続きを進めているか
  • 配転先が不利益でない
  • 調査の結果、ハラスメントがなかったとの判断に至っている
  • 行為者に対しても適切な処分を行っている

問題社員の配置転換の前に行うべき準備の内容

問題行動の記録を残す重要性

配置転換が後に労働審判や訴訟で争われた場合、企業側が配転の適法性を立証する責任を負います。「言った・言わない」の水掛け論を避けるため、以下の記録を事前に整備することが不可欠です。

次の最新裁判例は、面談記録を残していたことから、問題社員の配置転換に成功した例です。

 

(参考:東京地裁令和7年4月15日判決労働経済判例速報2597-27)

・労働者Xは、上司Aに対して、面談の都度、予定された面談時間を大幅に超過(3日間で11時間もの面談となった)、同僚の批判(例:あの男は信用に値しない)や上司Aへの非難(例:「管理職としてダメ」「健忘症のAさん」)を繰り返していました。会社は、労働者Xを労働者Xの業務と関連する別の部署に配置転換しました。この異動は通勤距離が1時間程度延びるものです。

・労働者Xは配置転換が無効であると訴えました。

・裁判所は、原告の言動は、その内容の適否の問題にかかわりなく、態様として不適切なものであること、原告の言動によりA分室長の業務に支障が生じ、A自身が体調不良となったことを踏まえれば、職場環境の改善のためには、原告を他の部署に異動させる必要があったと判断し、配置転換の命令は有効と判断しました。

 

この事案では、上司Aに対する労働者Xの具体的な発言があったため、通勤時間が大きく延びる配置転換も合理性があると判断されたことになります。

問題行動の記録方法

多くの裁判例で使われている記録方法は、指導記録・注意書の作成です。記載内容の例は、次のとおりです。

  • 日時、場所
  • 問題行動の具体的内容
  • 注意・指導した内容
  • 本人の反応・弁解
  • 注意した管理者名

口頭注意であっても、管理者が後日、指導記録として文書化しておくことが重要です。

 

(弁護士のコメント)

東京地裁令和05年04月28日判決は従業員30人程度の事業所でした。

このような事業所であっても、裁判所は、問題行動や指導の記録を作成し、そこに基づく主張立証を行うことを求めることがわかります。

この他、過去2〜3年分の人事考課表を保存し、問題行動や業績不振が継続的に記録されていることを示すことがあります。

※数年来の能力不足の裏付けを提出したことで、常勤講師であった労働者Xを常勤事務職員にする配置転換が適法となった例として京都地裁令和7年2月13日労働判例1330-5があります。

Q 問題社員の配置転換に伴い賃金を下げることができるか

配置転換と同時に賃金を下げるための要件

配置転換は労務提供の場所や内容の変更であり、賃金等の労働条件を当然に変更するものではありません。

配転に伴って賃金を減額する場合は、以下のいずれかの根拠が必要です。

  • 労働者の同意・・・賃金の引き下げであり自由な意思に基づく同意が必要です
  • 賃金規程上の根拠・・・役職・職務と賃金の具体的な金額が紐づいていることが必要となります。
 

賃金の引き下げができず700万円の差額賃金の支払いを要した例

次の裁判例は、賃金規程上の根拠がないにもかかわらず賃金を引き下げた結果、差額賃金として700万円の支払いを命じられた事案です。

(参考:東京地裁令和5年6月9日判決)

・管理職であった労働者Xが管理職から外されたことを理由に、基本給が85万円から43万円に下がった事案。

・賃金規程や降給規程には「職務又は職務レベルの変更により、給与レンジが下方に位置する新職務に移動した場合は、降給を実施することがある。この場合、新給与は新職務に対応する給与レンジ内で決定する」との規定があるが、レンジ表が給与規程になかった。

・裁判所は、「職務又は職務レベルの具体的な内容や、給与レンジの額、職務の移動の基準は、社員給与規程及び本件降給規程のいずれにも定められていない。」こと等を踏まえれば、賃金の引き下げは無効であると判断した。

・結果的に、会社に対し、賃金相当額として700万円弱の支払いを命じた。

 

(弁護士のコメント)

中小企業では「この仕事をやってもらうからいくら支払う」という決め方をしており、仕事が変わる以上、賃金が変わるのは当然であると考える経営者の方は多いです。

しかし、私が対応した事案でも、職務を営業職から事務職に変えた際に賃金を30%減額した事案で、後に労働組合を通じて賃金差額の請求がきた事案もあります。

賃金を下げるのであれば、少なくとも、どの程度職務の負担が減るから賃金を下げるという説明と契約書で同意を取得することが欠かせません。

 

配置転換を問題社員が拒否した場合にはどのように対応すべきか

いきなり解雇せず、言い分確認などを行う

配置転換命令を問題社員が拒否した場合、まずは、上記の各設例を踏まえて配置転換命令が適法か否かを判断します。

適法な配置転換命令を従業員が拒否した場合、いきなり懲戒処分を行うのではなく、段階的に対応します。

 

(参考:東京地裁令和3年2月17日判決)

・労働者Xは配置転換を命じられた後、2ヶ月間、欠勤を続けた。この間、マネージャーはXに電話、ショートメッセージ、文書での出勤命令に応じず、処分される旨の警告にも弁明の機会の通知にも反応しなかった。そのため、会社が労働者Xを解雇した事案。

・裁判所は、本件配転命令が有効であるため、欠勤は無断欠勤の懲戒事由に該当し、2か月近くにわたり連絡を無視し続けており、業務命令違反の程度は著しく懲戒解雇処分となることもやむを得ないと判断し、解雇を有効と判断しました。

 

(弁護士のコメント)

当職の対応した事案の中には、配置転換の理由の説明やその言い分の確認を怠ったために、配置転換の命令を無視したことを理由とした解雇が無効との心証に至ってしまった事案がありました。

配置転換が適法であったとしてもいきなり解雇するのではなく、説得を行うことが重要となります。

配置転換を拒否する理由の確認の方法

まず、なぜ配転を拒否するのか理由を確認します。育児・介護等の個人的事情があるのか、配転命令の内容を誤解しているのか、単に現在の職場に留まりたいだけなのかを把握します。

理由を確認した上で、以下の説得を試みます。

  • 配転の必要性を丁寧に説明する
  • 配転先での業務内容やサポート体制を説明する
  • 個人的事情に対する配慮を示す
  • 配転を拒否した場合の不利益を伝える
 

【弁護士のコメント】

この時点で労働者の側から職種限定合意の主張が出るケースがあります。

職種限定合意が雇用契約書に記載されていないケースであっても、裁判所は募集時の要項、実際の業務の内容、これまでの説明内容等を踏まえて、職種限定合意の存在を認定することがあります。

そして、黙示の職種限定合意であっても、そのような合意がある場合には配置転換の命令権は生じ得ないというのが最高裁の判例です(最高裁令和6年4月26日判決)。

このため、このような主張が出た場合には、職種限定合意があると法的に評価される余地がないか、検討する必要があります。

書面による警告や懲戒処分の実施

上記にもかかわらず配置転換の命令を問題社員が無視した場合には、警告や懲戒処分を行うことになります。

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

この記事を書いた弁護士の紹介

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

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