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2026年1月2日投稿
新卒採用をした社員が入社3か月を過ぎても社会人としての基本が身に付かずに困っているというケースをよく聞きます。
「Z世代だから」などと諦めずにどのように対応すべきか。
弁護士が経営者側の立場で解説します。
当社は、新卒の労働者Xを採用しました。
ところが、労働者Xは、試用期間のうち3か月間で、次のような行動がありました。
さすがに目に余るため、辞めてもらいたいと考えていますが、どのように対応すべきでしょうか。
設例の事案は大阪地裁令和7年1月22日判決及びその控訴審判決である大阪高裁令和7年7月29日判決を題材としたものです。
この事案では市役所の条件付き採用(試用期間)の延長とその後の免職処分(本採用拒否)の適法性が争われました。
そして第1審の大阪地裁は条件付採用の延長も免職処分も違法であると判断しましたが、控訴審は、いずれも適法であると判断し、結論が分かれた事案です。
上記設例の問題行動等があったため、被告Y市がXの条件付採用期間を延長した。延長後、Xは出社しなかったため、Yが本採用を拒否した事案
経営者の感覚としては社会人としての基本的な対応ができないミスを繰り返す問題社員の免職を有効とした大阪高裁の判断の方が腑に落ちやすいと考えます。
しかし、大阪高裁判決を収録した労働判例の解説では、新卒社員であることを踏まえれば免職処分が適法との結論とは反対の結論もありうる旨が解説されています。
実際、大阪地裁判決の判断のように、裁判所は、能力不足の問題社員で反抗的な態度がない社員(出来の悪い社員)の解雇について、「具体的に指示・指導することが求められるというべき」すなわち「教え方が悪い」と判断して解雇を無効とすることが多いです。
大阪地裁のような判断となると会社側としては、能力不足で解雇するような社員を復職させ、賃金1年10か月分などを支払い、さらに一から具体的な指導を行う必要が生じかねず、労務管理の負担が跳ね上がります。
また、大阪高裁で結果的に本採用拒否が有効と判断されるまで、2年4か月もの期間が経過しています。
このように、解雇をめぐるトラブルは長期化しがちな上、敗訴するリスクも高く、敗訴時には1年〜2年程度の賃金を支払うことも珍しくありません。
このため、設例のような社員でも解雇するのではなく、話し合いによる解決を目指すのが重要です。
設例の事案で労働者Xは指導をパワハラと受け止めたり、指導により体調不良になったりしています。
指導がパワーハラスメントに該当しない場合には、指導を不快に思った労働者が「指導で体調を崩した」と述べたとしても、指導が違法となるリスクは極めて低いです。
ポイントは①客観的な必要性と②相当な態様での指導であることです。
①について、設例の事案であれば、問い合わせを放置した事実や期限内に書面を提出しなかった事実が必要性の根拠となります。
②について、設例の事案であれば、次の4点を伝えるにとどめることが考えられます。
裁判例の中には、労働者Aが就業時間中に本を読んでいたところ、上司Bが業務に無関係な本を読んでいると判断して、文書で警告をしたことの適法性が争われた事案もあります。この事案で、裁判所は、事実確認等の容易な調査すら実施せずに警告をしたことは、著しく相当性を欠く指導でありパワーハラスメントに該当すると判断しています(東京地裁令和5年12月7日判決)。
もし、事実関係についての証拠が乏しい場合には、労働者本人に、問題と考えている内容を指摘し、言い分を確認した上で、警告等を検討することになります。
客観的に業務改善の必要性が認められる場合、指揮命令権に基づき、適切な方法で指導を継続する権利が企業にはあります。
ただし、同時に企業には安全配慮義務もあります。
指導がパワーハラスメントでなかったとしても、体重が極端に落ちている様子が伺えるようなケースでは、指導担当者を変えたり、休職させたりすることも考えられます。
この事案では、労働者Aは上司Bから未経験の業務について、複数回の叱責を受け続け、体重が15kg程度落ち、しかも「死にたい」等と言い出した末に、自殺した事案です。
裁判所は、指導はパワーハラスメントに該当しないとしつつも、「心身に過度の負担が生じないように、同人の異動をも含めその対応を検討すべきであった」にもかかわらずそれ等の措置を講じなかったことから安全配慮義務違反があったと判断し、会社に6100万円超の損害賠償の支払いを命じました。
設例の事案の場合、まずは各種問題行動の記録を確認します。メールや他の部署からの報告、誤字脱字の残ったレポートなどを集めます。
その上で、労働者本人と面談します。
面談の中では、これまでの問題行動を示した上で、改善に向けた指導も行ってきたこと、しかし改善が見られないことなどを、個別のエピソードを元に説明します。
その説明の上で、会社の求める水準の業務ができておらず、このまま働き続けることは双方にとって大変であると考える旨を伝え、退職に向けた誘導をすることになります。
この場合、具体的にどの指導が問題であると考えるのかを確認します。
その上で言い分自体からパワハラに当たらないケースでは、指導をした理由を説明するなどして、パワーハラスメントであるとの誤解を解くことになります。
退職を拒否した場合、試用期間の延長ができる場合には、試用期間を延長することも考えられます。
この通知は書面で行うことになります。
試用期間を延長した場合、まずは、これまでの試用期間中でどのような業務ができていなかったかを改めて整理し、延長した試用期間の間にどの業務がどの程度できるようになる必要があるかを伝えます。例えば、人名などの誤字脱字のない書面を作成する、書面作成期限までに書面を提出するなどの指示を改めて具体的に出します。
また、日々の業務の進捗や業務内容、指導を振り返ってもらうための日報を労働者に作成してもらうことも考えられます。日報は10分程度で作成してもらい、都度、上長がチェックします。その中で指導内容を正しく把握しているか否か、指導を受けたことを忘れていないかをチェックして日報にコメントして日報を返却します。
このような密度の濃い指導を行い、延長後の試用期間満了のタイミングで、再び退職の話し合いなどをすることになります。
日報に記載する上長のコメントについて伝えたいことはたくさんあるが、どのように整理して記載したらいいかわからないというケースは多々あります。この記載がそのまま証拠となる以上は、裁判になった時を見据えた記載が欠かせません。
労働問題に強い弁護士がコメントの代筆を行うことで、必要な証拠を整えることができます。
問題社員の解雇について、解雇の実施前に弁護士に相談することをお勧めします。実施後では手遅れのケースが多くなるためです。
相談すべきタイミングは、次の3点が考えられます。
弁護士に解雇前から相談することにより、法的リスク評価、適切なプロセスの構築、必要な証拠の整理が可能となり、不当解雇訴訟リスクを最小化できます。
また、早期に相談することで、「証拠を一から作り直す必要が生じた」という事態を防ぐことができます。我慢の限界が来る前にご相談ください。
「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。
経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。
他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。
弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。
大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。
御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。
弁護士名:稲田拓真
岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。
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