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協調性の欠如による解雇のポイント・最新裁判例で弁護士が解説

2026年01月03日投稿

協調性の欠如した問題社員が同僚従業員などと不和を引き起こしているケースでは、問題社員の対応に悩むことになります。

今回は、協調性の欠落した問題社員の解雇について、そのリスクと解雇に向けた準備のポイントを解説します。

 

設例

当社は従業員10名のサービス業です。

当社の従業員であるAは、次のような行動を起こしています。

  • 同僚に「あなたの言うことは聞きたくないです。声も聴きたくない。」等と述べる
  • 有給休暇が集中する時期に他の人と調節せずに休暇を取る
  • 上司から指示された仕事について「他の人に指示されたと思った」と言って応じない
  • 会社が指示した業務について「それは他の人の担当です」と言って拒否する

このような行為を繰り返す社員に辞めてもらうためのポイントはありますか。

 

参考となる裁判例

設例の事案は東京地裁令和5年8月2日判決を題材としたものです。

この事案で裁判所は、次のとおり判断して、解雇を無効としています。

 

最新裁判例:協調性の欠如を理由とした解雇を無効として330万円以上の支払いを命じた例

東京地裁令和5年8月2日判決
事案

Y社が設例の行為を含む複数の問題行動(作業着を正しく着用しない等)を理由として、労働者Xに対して2回に亘り退職勧奨をしたが、Xが応じなかったこと等から、Xを解雇をした。

XはY社に対して復職と解雇期間の賃金支払いを請求した

判断
  • 「あなたの言うこと」云々について裏付けがない。
  • 有給休暇の取得の方法について、注意指導を受けた形跡はない。
  • 原告がIからの片付けの指示を故意に無視したとまでは認められない。
  • 「それは他の人の担当です」と述べたことについて、本件退職勧奨〈1〉までに原告がこの点に関して具体的な指導等を受けた形跡はうかがわれないし、本件退職勧奨〈1〉の後に同じようなことを繰り返したとも認められない。
  • これらの事実からすれば、協調性欠如に関し、本件解雇の客観的合理提理由及び社会的相当性に当たる事実があると認めることはできない。
 
結論
  • 労働者Xの解雇は無効
  • 解雇日からの賃金として330万円超の支払いを命じた。
 

最新裁判例の分析

この裁判例は、一般的に協調性の欠如する問題社員の解雇で必要となる①問題行動の特定、②是正に向けた指導を行っても、解雇が無効となったことに特徴があります。

しかし、従業員10名の事業所で円滑なコミュニケーションや作業の連携ができない従業員を雇い続けることは、従業員同士の連携を損なうことになります。

そのため、契約を終了させるためには慎重な対応が必要となります。

 

協調性の欠如を理由とする解雇の確認ポイント

  • 協調性の欠如を示す具体的な言動の内容
  • 協調性の欠如による業務の支障の有無・程度
  • 厳重注意を行い、改善がない場合には懲戒処分を行う
  • 解雇のタイミングを見極める
 

ポイント1:協調性の欠如を示す具体的な言動の内容

被害者となっている従業員からヒアリングを行い、具体的な言動を特定します。

この特定ができていないと、裁判所は、具体的な問題の貼る言動がわからない=本当に問題行動があったのかがわからないと判断し、解雇を無効とします。

次の参考裁判例は、協調性の欠如の具体的な内容を特定できないと、3000円の賃金の引き下げさえも違法となることを示す例です。

 

参考裁判例:具体的な問題のある言動を特定できず人事考課が違法となった例

京都地裁令和4年4月27日判決
控訴審である大阪高等裁判所令和04年11月24日判決でも結論は是認。上告審(最高裁令和6年4月26日判決)では審理対象になっていない。
事案

被告は、原告が、課内ミーティング、朝礼、業務時間中に長時間にわたり、一方的に自己の見解を述べ、他の職員を責めるとともに、当該職員が指摘や反論をするとパワハラであると一方的に非難していたとして、賃金を月額3000円引き下げる人事考課を実施

判断
  • 原告が、いかなる時に(いかなる場で)、いかなる内容のことをどの程度話し、それにより周囲がどの程度迷惑をしたのか、それに対して被告はどのような指導をしたのかということが全く記録に残されておらず、被告の主張のみを持って原告がその主張どおりの行動をしたと認定することはできない。
結論
  • 本件不利益変更は人事権の濫用により違法・無効であるとして、差額賃金の支払いを認容

最新裁判例の分析

  • 被害者とされる従業員などから具体的な発言時期と内容を聞き取る
  • メール・チャット等の文書の証拠を確認する
  • 問題社員から具体的な発言
  • 問題社員から聞き取りを行う
 
問題社員からのヒアリング対応を弁護士に依頼する詳細はこちらへ

ポイント3:厳重注意を行い、改善がない場合には懲戒処分を行う

厳重注意について

具体的な言動を確認した上で、厳重注意を行います。厳重注意時に伝える項目は概ね次のとおりです

チェックポイント:厳重注意書の記載例
  • タイトル(「厳重注意」という警告であることをタイトルから示す。)
  • 作成日(事実関係の戦後関係を確定するために必要となります。)
  • 具体的な発言内容(誰に、いつ、なんと述べたか)
  • 当該言動が懲戒事由に該当しうることの指摘
  • 同種の言動等を行なった場合には懲戒処分となりうること

懲戒処分について

厳重注意書で厳重注意をした後にも問題行動を繰り返す場合には懲戒処分を行うことになります。

言動にもよりますが、多くのケースでは、初回に譴責または減給の懲戒処分を行い、2回目には短期間の出勤停止などの処分を行い、3回目以降は出勤停止期間を延ばすなどして処分を重くすることが考えられます

 

ポイント4:解雇のタイミングを見極める

上記ポイント1、2をともに満たすような問題のある発言を繰り返し、懲戒処分を経ても改善がないような場合には、解雇も検討することになります。

ただし、解雇に先立って、退職勧奨を行い、話し合いによる解決を目指すべきです。

協調性の欠如の場合、参考裁判例のように、問題のある言動が繰り返されていても解雇が無効となるケースは珍しくありません。

このため、紛争となる可能性のある解雇は、最終手段となります。

 
最新裁判例に関する弁護士のコメント・・・最新裁判例で退職勧奨に失敗した理由の検討

設例の最新裁判例(東京地裁令和5年8月2日判決)では、退職勧奨を2回行っています。

しかし、Xは退職勧奨に応じていません。

あくまで推測になりますが、退職勧奨が成功しなかった原因は次のように考えます。

 

退職勧奨は、①辞める必要性を理解してもらい、②辞めるメリット>辞めるデメリットと感じてもらい、③辞めても良いという感情になってもらうことで成功します。

 

最新裁判例では、Y社は、4回に渡り業務改善指導書を作成し交付しています。いずれにも懲戒処分の警告はあります。しかし、Y社は、懲戒処分はしませんでした。

このため、Xとしては、Y社の懲戒処分の警告はいわば「単なる脅しである」と受け止め、深刻に自分の問題点である協調性の欠如を自覚していなかったことが推測されます。

このため、そもそも辞める必要性を理解していなかったと考えます。

 

そのような状況では、賃金1か月分(1回目)、賃金3か月分(2回目)と決して悪い条件ではない退職条件を提示されても、退職勧奨は成功しません。

 

懲戒処分という正式な処分を適正に行うことで、問題社員に、自分には協調性が欠如していることや、会社が本気で問題視していることを自覚してもらいます。

そして、辞める必要性を理解してもらえれば、解雇するまでもなく、退職勧奨により紛争にならない解決も目指すことができます。

 

実際に当職の対応した事案でも、問題社員の退職に成功しています。

 

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

この記事を書いた弁護士の紹介

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

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