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2025年12月28日投稿
病気による休職を繰り返す従業員がいて対応に困っているとのご相談をいただいたことがあります。
今回は、休職を繰り返す従業員がいる場合にトラブルを回避するためのポイントを解説します。
当法人は私立高校を営む事業者です。
当法人の講師であるXさんは、1年半前にうつ病となり欠勤を続け、休職期間が満了する直前に「就労可能」との診断書を出して復帰しました。
ところが、Xさんは復帰後、半年間に渡り、業務量をこれまでの3分の1程度にしたにもかかわらず、何度か欠勤をしており、今にも休職の申請が出そうな状況です。
当社としては、休職状態を繰り返そうとする従業員について解雇することを考えています。
設例と近い事案で注意すべき裁判例は、東京地裁平成22年3月24日判決です。
この事案は、設例のような状況を踏まえ、法人がXさんを平成20年3月に解雇しました。すると、Xさんは法人の解雇が無効であり、解雇日後の賃金を支払うように請求しました。
裁判所は、次の理由からXの請求を認めました。
そして、法人に対して(退職金の充当による既払い分を含めて)2年分の賃金である1300万円弱の支払いを命じました。
(参考裁判例:東京地裁平成22年3月24日判決)
・Xには回復可能性があったとの医師の証言がある。
・Y法人は退職の当否等を検討するに当たり、主治医であるA医師から、治療経過や回復可能性等について意見を聴取していない点は「現代のメンタルヘルス対策の在り方として、不備なものといわざるを得ない」
・「本件解雇に当たって、原告の回復可能性について相当の熟慮のうえで、これを行うべきであったと考えられる」が上記のような不備等を踏まえれば、本件解雇は「やや請求なものであった」
上記の裁判例は休職を繰り返した事案そのものではありません。
しかし、休職を繰り返すケースでも、回復可能性の有無について医学的に検討せず解雇すれば、「現代のメンタルヘルス対策の在り方として、不備なもの」として解雇が無効となることも想定されます。
このため、規則と従業員対応の両面から対策を取る必要があります。
整備のポイントは休職期間の通算規定の設置となります。
複数回の休職期間を通算する規定を設けることで、複数回休職をした場合には休職期間を短くすることになります。
規定例は次のとおりです。
(規定例)
第●●条 (休職期間の通算)
1 第●●条の休職満了後、再び第●●条の休職事由に該当した場合、休職期間は、就業規則第●●条に定める休職期間から前回の休職期間を控除した期間とする。
休職期間の通算規定を適用して退職扱いを認めた事案として、東京地裁令和6年12月10日(労経速2584-8)があります。
・会社の就業規則には休職期間を93日として「復職後同一または関連した傷病により再び休暇(休職)をとるときは、既に取得した休暇日数(休職期間)を差し引いた残余の日数の長期私傷病有給休暇(私傷病休職)を付与する」との規定がありました。
・労働者Xは、有給と無給を合わせて4か月の期間、休職しました。休職の後に復職して3週間、Xは会社の軽微な課題に対応できない、トイレにこもって叫び始める等の言動がありました。
・このため、会社が産業医に確認をした上で、労働者Xが休職事由に該当するとして、上記規定に基づき休職期間を計算した結果、残りの休職期間がなかったため、Xを退職扱いにしました。
・裁判所は、「原告には、令和4年3月22日時点で、本件休職に係る休職事由と同一又は関連した、本件休職事由に関する条項に該当する休職事由があったものというべきであるから、被告が本件通知を行った時点で、原告は、休職期間満了により退職となった」と判断し、通算規定を理由とした退職扱いを適法と判断しました。
弁護士のコメント
休職の通算規定に「復職後6か月間の間」等の規定を設けているケースも少なくありません。
しかし、当職が聞き及んだ事案には、期間後に休職をするケースがありました。具体的には、3か月休職 → 6か月就労 →3か月休職 →6か月就労 を繰り返すケースがありました。
規則の抜け穴をつくような従業員への対応のためにも、上記裁判例のように通算期間を限定しない規定とすることも考えられます。
休職を繰り返す従業員から診断書が出た場合には、主治医や法人の指定する医師から意見を確認することが重要です。
上記東京地裁平成22年判決は、医師の意見確認を怠ったことが解雇を無効とする決定的な理由になっています。
他方で、次のように休職から復職後も勤怠が不良で再び休職になった事案でも、裁判所は、医師から意見を確認したことも踏まえて、退職扱いを有効としています。
(参考:東京地裁R5/12/14判決)
・労働者Xは、最初の休職期間満了後、9か月以上に渡り週一の頻度で欠勤や早退を繰り返す等しました。このため、上長が、Xに注意をしました。すると、Xは注意の5日後に「適応障害」との診断書を提出し、4か月間休業しました。Yは、主治医から就労が不可能であり、今後さらに約1か月の休養を要するとの診断を、産業医からも同種氏の診断を取得したため、Xを解雇しました。
・裁判所は、Xは適応障害で就労できず、治癒する目処も立っていなかったこと、YがXの就労可能となる見込み等について確認を怠ったとも言えないこと、休職の通算規定から再びの休職は就業規則上も予定されていなかったことを踏まえ、解雇を有効(解雇は不当労働行為に該当しない)と判断しました。
このような場合には、例えば次のような事項を確認することになります。
弁護士のコメント
休職を繰り返す従業員について、診断書の内容が嘘ではないかと思うケースもあります。もっとも、裁判所は、診断書を否定するのであれば医学的な根拠を用意するように求めます。
そのため、医学的な根拠なしに「嘘をついていると思うから」といった理由で休職を認めないと、解雇が無効となり、結果的に1000万円を超える支払いを命じられるリスクも高まります。
この場合には、解雇に踏み切る前に、休職の原因となっているメンタル疾患が労災になるか調べることになります。
労災の場合には労働基準法19条に基づき休業中は原則として解雇ができないためです。
労災か否かを検討する際には、厚生労働省の心理的負荷の労災認定基準を踏まえて判断することになります。
経営者側の労働問題に詳しい弁護士であれば、休職を繰り返す従業員に対して、次のような対応が可能です。
休職を繰り返す従業員への対応を相談するタイミングは、特定の従業員から2回目の休職の申し出があったタイミング(あるいはもっと早いタイミング)です。
このタイミングであれば、主治医からの意見聴取の助言などにより、トラブルにならない対応方法を助言できるためです。
(弁護士のコメント)
退職扱いにした後に争われてから相談にお越しいただいた場合、弁護士は、会社の代理人の立場で対応いたします。
しかし、争いにならないのがベストである上、争いになる前であれば取れる手段はたくさんあります。
そのため、早期のご相談をお勧めいたします。
「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。
経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。
他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。
弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。
大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。
御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。
弁護士名:稲田拓真
岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。
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