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情報漏洩を理由に従業員を解雇できる?経営者が知っておくべきリスクと対応手順

2026年2月22日投稿

情報漏洩をした社員を解雇したい」と思ったら、まず確認すべきこと

取引先に社内の機密情報が漏れている。どうやら特定の従業員が情報を流しているようだ――そう疑ったとき、「すぐに解雇できるのか」と考える経営者は少なくありません。

しかし、情報漏洩を疑っているだけで解雇に踏み切ることは、法的に非常にリスクが高い行為です。対応を誤ると、解雇が無効となるだけでなく、会社が損害賠償を支払う事態にもなりかねません。

この記事では、実際の裁判例をもとに、情報漏洩を理由とした解雇・懲戒処分で経営者が陥りやすい失敗と、正しい対応手順を解説します。

 
 
 

裁判例に見る「失敗する解雇」のパターン

最新裁判例:東京地裁 令和7年7月3日判決

この事案は、従業員Xが、法人Y(代表者はC理事長)の外部に知られたくない情報(架空取引の疑い・降格希望調書を配布していたこと等)を、外部団体B(代表者はC理事長)のD理事に流出させたとして、Y社がXに対し、停職14日の懲戒処分を行った事案です。

しかし裁判所は、この懲戒処分を無効と判断しました。

 

情報漏洩の事実が認定できずに懲戒処分が無効となった事案

事案の概要

設例のような情報漏洩を理由にY(会社)がXを懲戒処分(停職14日)とした事案。

YがXによる情報漏洩があると判断した根拠として概要、次の事情があった

  • Xが団体Bの担当者になってから、外部団体がY社への干渉を始めた
  • XがD理事に対し、自身の上司を非難する発言をしていた。
  • Xが別件でD理事に対して情報漏洩をしていた。
本件の主要な争点

Xが情報漏洩をしたか否か。

判断内容
  • 対象となる情報漏洩の行為に「及んだことを直接的に証明するメールや録音記録等の客観的な証拠はな」いこと
  • D理事は、X以外の者から情報を得たと供述しており、「直ちに不自然・不合理とは言えず、これを排斥するに足りる客観的証拠も見当たらない」こと
  • 会社が根拠とした事情は、Xから情報提供があった「可能性を示唆するものにとどまる」こと
  • このため、本件停職処分の理由については、「いずれもそのような事実を認めることができず(中略)本件停職処分は懲戒の理由を欠くものとして無効である」
 
会社が負った損害
  • 停職期間中の未払い賃金:約40万円
  • 調査義務を怠ったとして認められた慰謝料:20万円
  • 合計:約60万円の支払い命令

「怪しい」だけで処分した結果、会社側が60万円を支払う羽目になったのです。

 
 

最新裁判例の分析

この裁判例はメール等の直接的な証拠がない状況で、情報漏洩を理由とした懲戒処分を無効とすることで、「疑わしきは罰せず」という原則が懲戒処分でも妥当することを改めて明確にした意味があります。

解雇は懲戒処分よりも重たい処分のため、「疑わしい」が証拠がない事案では解雇が困難であることを示しています。

このことを踏まえ、情報漏洩を理由とする解雇を目指す対策を取ることになります。

 

情報漏洩で解雇・懲戒を狙うための事実の確認ポイント

裁判例を踏まえると、情報漏洩を理由とした解雇や懲戒処分が有効となるには、まずもって、情報漏洩の事実を確認する必要があります。

このポイントは次の2点です。

 

情報漏洩の事実を証明できる「直接的な証拠」を探す

まず確認すべきは、「本当に情報漏洩があったのか」を証明できる証拠の有無です。状況証拠だけでは不十分で、誰が・いつ・誰に・何を・どのように漏洩したかを裏付ける証拠が必要です。

証拠として有効なものの例としては、業務用メールのログ、LINEなどメッセージアプリの履歴、USBの接続記録やクラウドへのファイル複製履歴、録音などが挙げられます。証拠を探す際は、業務用の貸与端末を回収してメールやチャットのログを確認するのが基本です。証拠の痕跡が消えているケースでは、フォレンジック調査によるデータ復元を検討することもあります。

なお、前記の裁判例でも、別件の情報漏洩(メールによるもの)については証拠が残っていたため、こちらを理由とした解雇は有効と判断されています。直接的な証拠があるかどうかは、処分の有効・無効を分ける最大のポイントです。

 

従業員の言い分を否定できるだけの調査を尽くしていること

証拠が十分でない場合でも、「調査を尽くしたか否か」が問われます。

前記の裁判例では、会社がD理事へのヒアリングを怠ったことが「調査を尽くすべき注意義務違反」と認定され、慰謝料請求が認められました。

外部の理事に対する調査をしなかったことさえも義務違反となることからしますと、少なくとも、会社が調査協力を命じうる社内の関係従業員に対するヒアリングは必須と考えます。このヒアリングを行わないまま「情報漏洩があった」と決めつけて処分した場合、同様に義務違反と判断されるリスクは高いと考えるべきです。

調査で行うべきことの例としては、目撃者となりうる社内従業員へのヒアリング、資料提供の依頼、ヒアリング内容の記録・保管などが挙げられます。

また、可能であれば、情報漏洩先に対しても、確認のための連絡を書面で行うことはありえます。

 
弁護士のコメント(判断への疑問)

経営者側の弁護士としては、トップが同じとはいえ、Y社が別の組織であるB法人の理事への調査をする義務があったとの裁判所の判断には、疑問があります。

これは、あくまでY法人とB法人とは別の組織であり、Yの規律維持のための服務規律がB法人のD理事には及ばないことから、D理事にはY法人の懲戒処分の調査に協力する義務がないためです。

同じ問題は、顧客(カスタマー)との関係でも生じうるところです。労働施策総合推進法が改正され、カスタマーハラスメントへの対応が義務となる中で、事業者は、顧客に対する調査義務を負うのか、裁判例の動向も注視する必要があります。

 

証拠があれば解雇できるのか?「行為の悪質性」も問われる

概要

情報漏洩の事実があったことが裏付けられたとしても、即座に解雇が認められるわけではありません。情報漏洩による解雇が有効と認められるには、漏洩行為の悪質性・結果の重大性・反省の有無も総合的に判断されます。

前記の裁判例で懲戒解雇が有効とされたケースでは、次のような事情が認定されています

 

最新裁判例:情報漏洩を理由とした懲戒解雇を有効としたもの

上記裁判例での別件での情報漏洩行為となります。Xは、D理事に対して、次のような内容を記載したメールを送り情報を漏洩していました。

  • 職員N1(実名)は課長代理であるが病気休暇中であり鬱病のようであること
  • 職員N2(実名)は流産して無断欠勤状態であること等
  • 8月3日にMが来会し事務局長らが面会予定であり材料等の独自調達を検討している可能性があること
  • E事務局長(Yの従業員)は気に入らないステークホルダーを排除してきた「バケモノ」であること等
判断

XのD理事へのメールは情報漏洩行為に該当するとした上で、次の理由から、懲戒解雇を有効としました。

  • 「被告の職員が休職に至った経緯という職員個人の高度なプライバシーに関する情報を部外者であるD事務局長に伝えた点において、重大なひい行為に当たる」(行為の悪質性)
  • XはD事務局長が原因でB法人とY法人との間に確執が生じていることを認識しつつ、Yに対する攻撃材料となりうる情報をD事務局長に提供するなどしており、メールの内容は「被告とB〔法人〕との対立を一層激しくさせかねないものであって(中略)背信性が高い」(行為の悪質性)
  • C理事長から情報漏洩を禁ずる旨指示されたその日のうちにD事務局長にメールをしており、被告からの指示や法人秩序を軽視する原告の姿勢は顕著であること 等
 

裁判例の分析

「情報漏洩があった=解雇が相当」ではありません。漏洩の内容と状況を丁寧に確認した上で、処分の重さを判断することが求められます。

情報漏洩を疑ったときの対応フロー

ステップ1:証拠の保全・収集

業務用端末の回収、メール・チャットログの確認。必要に応じてフォレンジック調査も検討します。

 

ステップ2:関係者へのヒアリング・調査

社内の関係従業員、情報を受け取った側など、事案に応じた調査を実施。記録も必ず残す。

ステップ3:処分内容の検討

誰が・何を・どのように漏洩したか、その行為がどの程度悪質かを整理する。

そして、証拠・調査結果・悪質性を踏まえ、解雇が適切かなどを判断する。

 

労働問題に強い弁護士へのご相談について

情報漏洩を理由とした解雇・懲戒処分が有効となるためには、直接的な証拠の有無、調査を尽くしたかどうか、漏洩行為の悪質性という3つの観点からの検討が不可欠です。

「怪しい」という判断だけで処分に踏み切ると、解雇無効・賃金支払い・慰謝料という三重の負担を会社が抱えることになります。

情報漏洩が疑われる従業員への対応は、初動の段階から弁護士に相談することで、証拠収集の方法・調査手順・処分の適法性を適切に判断することができます。対応に少しでも不安があれば、まずはお気軽にご相談ください。

弁護士のコメント

今回は取り上げていませんが、情報漏洩の対応については、公益通報者保護法の問題が生じるケースもあります。

すなわち、法令違反の事実やその疑いを行政機関やマスコミなどに通知して情報漏洩をした場合には、通報内容や通報社が把握していた事実によっては、解雇や懲戒処分が公益通報者保護法違反で無効となることもあります。

情報漏洩の従業員がいる場合には、法令に則した対応が必要となりますので、早期に弁護士に相談して対策を取ることが重要となります。

最後に:岡山の労働問題に強い弁護士のご紹介

「従業員から訴えられた」「問題社員がいて会社だけでは手に負えない」といったケースでお悩みではございませんか。

経営者側の労働問題は弁護士でも得意、不得意が分かれる領域で、対応によっては多額の賠償を要することも珍しくありません。

他方で、弁護士によっては紛争にならない円満解決に向けたサポートができることもあります。

弁護士稲田拓真は、6年以上問題社員の対応などの労働問題に取り組み続けた、労働問題に強い弁護士です。

大学時代を過ごした岡山の中小企業に向けたサポートに力を入れています。

御社、あるいは社会保険労務士・税理士の先生方等では手に負えなくなった困難な労働問題は、是非ご相談ください。解決策を見つけていきます。

 

この記事を書いた弁護士の紹介

弁護士名:稲田拓真

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

 

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